7/6再開《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~5サイト33KPV
次なる試練の回廊。
そこは、床一面が鏡のように磨かれた水面で覆われた、蒼き静寂の世界だった。天井からは、水滴が無限に滴り落ち、その音が、空間の静寂をかえって強調していた。
「……悪趣味ね。今度は私の理性を、薄汚いシステムで模倣するつもりですか」
アクアが眼鏡の位置を直しながら、冷ややかに呟く。
その視線の先には、水面から音もなく現れた、アクアと瓜二つの姿をした天使が立っていた。
水の熾天使『|セラフィム・アクア《Seraphim Aqua》』。
透き通るような水色の髪、理知的な顔立ち、そして背中に広がる六枚の翼は、流体のように形を変え続けている。だが、その瞳にはアクアにあるはずの「知性への情熱」も「王への愛」もなく、ただ冷徹な演算結果だけが映っていた。
『フン。神も随分と皮肉な真似をする。貴様が最も誇りとする「理性」を、ただの計算機として具現化するとはな』
カインの声が、アクアの心を逆撫でするように響く。
「……不愉快です。私の姿で、私の論理を模倣するなど……これは、私の知性に対する冒涜ですわ」
アクアの手元で、水流が怒りのように渦巻く。
『王よ。奴の演算能力は貴様以上だ。純粋な水流操作で挑めば、貴様の論理は数秒で破綻するぞ』
カインの指摘に、アクアは不敵に微笑んだ。
「ええ、分かっています。だからこそ……論理的に『破壊』して差し上げますわ。王よ! 命令を!」
ヒカルは、アクアの瞳に宿る、普段とは違う種類の「熱」を感じ取った。それは冷静な怒りであり、同時に、自分の「偽物」を自らの手で葬り去るという、嗜虐的な喜びでもあった。
「アクア! 指揮権はお前にある! 思う存分やれ!」
「感謝します、王よ! さあ、授業の時間ですわよ、娘たち! そしてレヴィア、ミスティ!」
アクアが指揮棒を振るうように手を掲げる。
◇◆◇◆◇
第1波:5
「テラ! ソイル! まずは土台を固めて! 流体を『個体』として認識させるわ!」
「承知しました! 大地よ、水を縛れ!」(テラ)
「逃がさないよ!」(ソイル)
テラとソイルが、水面の下から巨大な岩盤を隆起させ、セラフィム・アクアの足場を固定する。
流動的な動きを封じられた天使が、無機質な瞳を細めた瞬間。
「レヴィア! ノア! ミスティ! 今よ! 貴女たちの『不純物』を混ぜなさい! この純粋な水を最も汚染する、対立属性で攻めるわ!」
アクアが叫ぶ。
ユニゾン参加メンバーは アクア(水)、テラ(土)、ソイル(土)、レヴィア(炎)、ノア(炎)、ミスティ(闇)。ユニゾンブレスには女性の王族しか参加できない。
「ほらレヴィア! 貴女の熱と私の水、そしてテラの土! わざと不協和音を起こして、奴の演算を狂わせましょう!」
レヴィアが、普段ならアクアと反発し合うはずの炎を、嬉々として解き放つ。
「ふふん! 貴様との共闘は癪だけど……私の炎が、あの澄ました顔を泥沼に沈めるのは悪くないわね! 行くぞ、ノア!」
ノアも母に続いて炎弾を放つ。
「いっくよー! ジュッてしちゃえ!」
そして、ミスティが闇の帳を下ろす。
「……論理の死角を突く」
アクアの水流(F音)が、テラの土(E音)とレヴィアの炎(G音)、そしてミスティの闇(Eb音)を巻き込み、ドロドロに煮え立ったヘドロのような濁流へと変貌する。
それは、純粋な水を最も嫌う「汚染」の概念攻撃だった。
音楽的調律: の旋律が、土(安定)、炎(汚染)、闇(死角)という相反する要素を戦略的汚染へと統合。
「5元ユニゾン――『』!!」
清浄な水の世界が、一瞬にして焦熱地獄と化す。
セラフィム・アクアの流体ボディが、熱と土と闇によって汚染され、その美しい輝きを失っていく。
『警告。水質汚染。魔力伝導率、低下。演算、エラー……』
「あら、どうしたの? 計算外でしたか? 愛とは、時に清濁併せ呑むもの……。純粋なだけの水では、この泥沼の戦場は生き残れませんわ! ほほほほほーー」
アクアが高笑いする。
「……おい、あいつ。私そっくりの敵を叩きのめすのが、普段より生き生きしてないか? 何か意味深じゃないの!?」
レヴィアが低い声で憤るが、アクアは流した。
「あらレヴィア、聞こえませんわ。気のせいですわよ、私情など一切ございませんーー、おほほほほほーー」
ヒカルは、アクアの豹変ぶりに、若干ドン引きしていた……。
◇◆◇◆◇
第2波:物理粉砕(連携技)
『いいぞ、アクア。奴の演算回路にノイズが走った。今なら物理攻撃が通る! フレア! シリウス! ボルタ! 叩き潰せ!』
カインの指示が、ヒカルの思考を加速させる。
「フレア! ライオス! 男の連携だ! 岩盤ごと砕いてやる!」
爆炎龍将軍フレアが剣に炎を纏わせ、先陣を切る。
「母上たちの作った隙、無駄にはしません!」
シリウスが蒸気魔法を纏った剣で切り込む。
「アタシのハンマーの錆にしてやるよ!」
ボルタが重力ハンマーを振り下ろす。
連携技参加メンバー(男性+ボルタ)は、フレア(炎)、シリウス(炎/水)、ボルタ(技術)。物理攻撃に特化した、連携技を叩き込む。
ドガァァァン!!
焼き固められ、動きの鈍ったセラフィム・アクアに、物理的な衝撃が直撃する。
セラミックのように硬化していた流体ボディが、粉々に砕け散った。
◇◆◇◆◇
第3波:3元とどめの
砕け散った破片が、再び集まろうと蠢く。
「再生などさせないわ。このまま……消えなさい」
アクアが冷徹に告げる。
「レヴィア! ノア! ミスティ! とどめよ! 跡形もなく蒸発させなさい!」
ユニゾン参加メンバー(女性のみ)は、 レヴィア(炎)、ノア(炎)、ミスティ(闇)だ。
「言われなくても! 燃え尽きろぉぉぉッ!」
「バイバーイ!」
「……闇に還れ」
レヴィアとノアの超高熱の炎に、ミスティの闇が混ざり合い、黒い炎の渦となる。
『3元・』。
それは、再生の余地を与えない、完全なる消滅の炎。
ジュワァァァァ……!!
セラフィム・アクアの残骸は、黒い炎に飲み込まれ、蒸気すら残さずに虚空へと消え去った。
「セラフィム・アクア、撃破確認。……論理的帰結です」
アクアが髪を払い、満足げに微笑む。
ヒカルは剣を収め、カインの通信に意識を集中させた。
ヒカルの脳裏に、カインの返答が響く。
『貴様の憎悪と愛、そして知恵の使い方は理解した。次は、貴様の最も重い愛を試す番だ』
その時、ヒカルの隣にいた磐石の守護龍テラが、緊張に顔を強張らせながら、無意識に一歩前へ踏み出した。
「もしかして、次は、わ、わらわかしら……?」
テラの隣で、深淵の孤高竜姫ヴァルキリアが、冷徹な瞳で回廊を見据える。
「フン。順番で言えば、炎、水、と来たら次は土か風。しかし、契約者よ。私と貴方が初めて出会った順番(レヴィア、アクア、テラ、セフィラ、ルーナ、ヴァルキリア)かもしれんな」
カインの皮肉な予告が響き渡ると、彼らの前には、茶色の光を纏った、もう一人の「見知った顔」が待ち受けていた。
【第184話へつづく】