異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
リッターくんは収納空間は持っていないようで、包みを大切そうに小脇に抱え、ありがとうとお礼を云って帰っていった。お別れの挨拶はしたが、見送りは断られたから、手を振って送り出した。
リッターくんがすべて綺麗に食べた後のお皿を、ワゴンへ移す。育ち盛りの少年が断食はいけない。特に、この世界だと運動量も多いし。まちなかでの移動は基本徒歩しかないものな。
「マオ」
はっとして目を向ける。サッディレくんが仁王立ちしていた。その後ろに、涙目のヨーくんが居る。サッディレくんは俺より少し体格がいいくらいで、ヨーくんは180cmちょいくらいだから、隠れるようにしているのが面白い。全然隠れられてないもん。
笑いを必死にこらえた。「なに?」
「さっきのやつ! 誰。なにもの?」
何者、と云われましても。
ヨーくんが、きつくみつあみにしているサッディレくんの髪を掴み、叱られている子どもみたいな表情でそれをいじった。「すっごくしたしそうでしたね」
「それ!」サッディレくんが肩越しにヨーくんへ云い、すぐにこちらへ向き直る。「なんあのあいつ。マオ、どうしてあいつのことひいきするんだよ」
ひいき……はした覚えがないのだが。心配だっただけだ。
俺はあははと笑った。
「ひいきなんて」
「してたっす! お菓子もあいつのために特別につくってたし」
うーん、それはだから、心配ゆえだ。自分がよく低血糖を起こすから、辛さが解る。
ヨーくんの顔がひきつる。「特別にお菓子を……?!」
ヨーくん甘党なのかなあ?でも、さっきプリン食べてたよね。何故ショックをうけたみたいな表情をしているのだろう。
セロベルさんが出てきて、呆れ顔になった。
「お前らまだ居たのかよ? 今日も協会で事務仕事があるんじゃねえのか」
目が合う。セロベルさんは笑いをこらえているよう。「マオ、あいつ大丈夫だったのか?」
「あ、はい。多分。あんまり喋らない子なんで」
「変なやつだけど面白いよな」
セロベルさんは、おそらくツァリアスさん達が来た夜のことを思い出したのだろう、こらえきれずにくすっとした。あの時リッターくんは、ご飯を綺麗に食べて、厄介に巻き込まれたくない、と淡々として出て行った。そういえば、それなりに位の高そうな貴族らしいリッターくんは、ツァリアスさんを知っていてもおかしくはないのだ。とすると、見逃してくれているのだろうか。
俺にも笑いがうつった。「ほんとに、だいぶ変な子ですよね」
「お前に云われるんだから相当だぜ」
それはどういう意味ですかね?
軽く睨む。セロベルさんははははと笑った。