異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
あれなのかなあ?
のぼせさせるためなのか、メロドラマというかよろめきドラマというか、なんかしらんがリューとアランで俺をとりあう?みたいなことになっている。こう、牽制し合っているというか。
リューが俺に話しかければアランが邪魔をするし、アランが俺に目配せしてくればリューは俺の手を触ってくる、という具合。エルンはにこにこしてそれを見守る。
もうすべてがうざいよね。
まず意味が解らない。とりあわれても嬉しくもなんともないわ。ドラマなんかなら第三者だから楽しく観るよそりゃあ。でも渦中の人物になってみろ、めんどくせえしうぜえしもうどうしようもない。なんだってこんなややこしいことになっているのか。
ってー、自業自得なんだった。俺は髪が短い上にピアスもしてないし、女の子扱いは仕方ないのだ。しかも、セロベルさんに思わせ振りにしていいように操っているみたいな役柄だからな。ワルイオンナなのだ。
なので、苦痛だけど我慢した。まじで苦痛だけど。手を握るな変な目付きすんなにやにやすんな近寄るなささやくな膝をぶつけてくるな。
終わったらケーキ食いたい。ちょこけーき!!
非情にもこの世界にはチョコケーキがないのだ。というかチョコがない。しかも、収納空間内のチョコも目減りしていて、もうあと少ししかない。チョコがなくなる前にもとの世界に戻れますように。とりあえず明日フルーツタルトつくって溜飲を下げよう。
「マオ、君って夜空のような瞳をしているね」
もうそのメロドラマ調やめない?あなたもはずかしいんじゃないの?
俺はリューへ流し目をくれ、ささやきを返す。「ほかの子にも云ってるんでしょ?」
「そんなことないよ、君だけさ……」
おおう、プロ根性ですな。すごいすごい。
アランが面白くなそうに鼻を鳴らした。「リュー、そんなに椅子をマオに近寄せる必要はないぜ」
「いいや、あるね」
あ、はい、解った。このふたりがかっぷるなんだって思ってやり過ごそう。俺は当て馬な。おっけーおっけー。
対処法を見付けだしたらちょっと気が楽になった。俺をとりあっているのじゃなく、痴話喧嘩。ってことで。エルンのえびす顔は気にくわねえけど。
収支……+貝貨50枚、くらい。
大勝ちって感じじゃなく、収支で云えば勝ってる、みたいな勝ちかただったな。大勝が過ぎても怪しいし、ってこと?
俺はお酒をぐいぐい呑んで、ちょっと酔っているふりもしておいた。酔った人間相手になら、演技も荒くなるだろう、と思って。
案の定、リューは何回か、もっと大きな勝負に出たらどうだい、と云ってきた。