異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
うんうん、俺はちゃんと金の亡者として認識されているな。よかった。
「だめ」俺はにやにやする。「今はね」
「いいとこで切り上げて、譲ってくれよな」
「約束はできないかなー」
ティーズくんはにやっとして、俺の肩を抱いた。「どうやったらあんなやつ引っかけられんの?こつ教えろよ」
「ティーズ」グエンくんの声が2トーンくらい低くなった。「いい加減にしろ」
「あ?お前だって気になってるだろ」
ティーズくんもどすのきいた声で応じた。ふたりは睨みあう。
娼妓は命がけの仕事だし、修羅場もくぐり抜けてきたのだろう、睨みあいの迫力が凄い。
グエンくんが云った。「僕ら西の娼妓は、行儀よくしているべきだ」
「だから東と南におくれをとってるんだろ。考えてもみろよ?この仕事での稼ぎは、南が一番かもしれない」
どうやら、お互いの売り上げについて、ある程度は把握しているらしい。賭場側からあっちより売り上げ悪いですよーとか云われるのだろうか。それとも、奥の部屋の利用頻度からの憶測?
南の娼妓って、安さが売りなのでは。人数が多いってことなのか、それとも薄利多売なんだろうか。リーニくんの接客スキル高そうだし、それに起因しているのかな。
グエンくんは射るような目をした。「弁えろよティーズ」
ティーズくんは口を噤む。
グエンくんが俺を見た。心配している表情だ。
「あのひと、大丈夫なの?マオにたかったりしてない?」
「そんなわけないよ」
はははと笑った。ま、賭けの資金は俺が提供したんだけれど。
ツィークくんには、お金持ちの役どころを演じてもらって、俺はそれにめろめろ、という演技をするのだ。ツィークくんは男に興味ないらしいから、間違っても本気にはならないだろうし、別の娼妓にもなびかない。丁度いい。
俺はなんとなく、印象づけたほうがいい気がして、云った。「なーんか、最近しつこいひとが居てさ。顔は割と好み?なんだけど、いまいちお金持ってる感じがしなくて。その点デッシュさんはお金持ちだし、金離れもいいんだよね」
「しつこい?」
「うん。ほら、あっちに出入りできるひと。煙みたいな色の目の」
グエンくんが真顔になる。そう、と、低い声を出していた。
ツィークくんが戻り、俺は笑顔で迎える。これ見よがしにハグをして、甘えているふうをする。ツィークくんの辟易した顔。「ちゃんと嬉しそうにして」
「解ってますよお」
これが巧くいけば、ツィークくんが高レート部屋へ這入れるかもしれないのだ。真面目にやってもらわないと困る。