異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ほーじくんが俺の袖をくいと引いた。仰ぐ。「……マオ、あいつと仲いいの」
「え?」
「あいつとはなによあいつとは。これでもロヴィオダーリ家の御曹司よ」
ユラちゃんがほーじくんへくってかかる。「祇畏士だからって偉そうにするんじゃないわ」
「偉そうなのはあなたでしょ」
ジーナちゃんがぼそっと云い、ミューくんはあわあわしている。
「あの、レフオーブル嬢?こちらはティヴァイン家の……」
「ティヴァイン!ティヴァインですって?その使い古してうす汚れたはたきみたいな頭、もしかしてあんた、あの名門ティヴァイン家の優秀な四男ってやつ?優秀なくせに試験にまーだ通ってない、あの?」
ミューくんがさーっとあおざめた。ジーナちゃんはスカートへ手を遣る。
リッターくんがユラちゃんをぽかりとやった。
「な!なにすんのよこのばか!」
「試験に通っていないのはお前もだろう。名門レフオーブル家の優秀な魔術者なのに。それにお前は、ねずみのように小さくてかしましい」
リッターくんは淡々と正論を振りかざす。ユラちゃんがぎっとリッターくんを睨んで口を噤んだ。両手で頭をおさえてかたまっている。
ほーじくんは俺の肩を抱いた。リッターくんを睨みつけている。獲物を狙う猛禽類の目だ。かっこいいー!!
「主の暴言は謝る。済まなかった」
「お前、嫌い」
頭を下げるリッターくんに、ほーじくんは凄く感情をこめてそう云う。リッターくんは平然と、それはどうも、と返した。
俺はへらへらわらう。「もー、ご飯食べようよ。みんな疲れてぴりぴりしてるよ?」
「……ん。わかった」
ほーじくんの羽毛が頬を擽った。ぎゅってしたい。
メニューは、すき焼きと、ご飯、それから栗の甘露煮。
お鍋に牛脂をいれて火にかける。まずは里芋だ。できたらあかめ。表面の毛を包丁でこそげ落として、それから洗う。皮は残っててもおいしいからおっけー。それを、牛脂が溶けたお鍋のなかへいれて、あぶらをまわす感じで炒める。里芋のはいってないすき焼きは淋しい。
続いて大きめの乱切りにした人参と大根。こちらもあぶらをまとわせる。そこへ牛肉を投入。ざっと炒めたら全体にお砂糖を振りかける。人参と大根から相当水分が出てくる。焼き豆腐はないので、豆腐を切っていれ、お醤油を加える。だしとかめんどくさいのは不要。ささげとかこんにゃくがあったらいれるんだけどな。
春菊もないので、ぐつぐつして牛肉にもほどよく火が通ったお鍋に、洗ってざく切りにしたほうれん草と、洗って千切ったレタスをいれた。煮すぎないうちに火から外せば、しゃっきしゃきのほうれん草とレタスがおいしいすき焼きの完成。