異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
目が覚めたのは完全に陽が落ちたあとだ。俺は跳ね起きて、慌てて準備をし、厨房へ行った。
が、慌てる必要はさほどなかったよう。食堂のテーブルは、ふたつしかつかわれていなかった。お客さんは警邏隊のみで、お茶とお菓子を楽しんでいる。話題は昼間の還元過多による魔物の襲撃についてなので、和気藹々と云う感じではない。
アーチからそれを見て、俺は調理にはいった。おなかが空いているだろうし、お茶とお菓子でなんとかなるとは思えない。とりあえず、カロリー摂取できて、あたたかいもの。
ズッキーニ・セロリ・人参・じゃがいも・きのこ類を粗みじんにして、菜種油で炒める。お塩をして牛ストックを加え、お醤油・パクチー・短めに切った麺をいれる。火が通ったら、最後にうす切りの牛肉をいれて、かたくならないうちに深皿へもる。
アジア風パスタ。旨くできた。
サッディレくん、アーレンセさんに手伝ってもらって、パスタを運んだ。ライティエさんが泣き声をあげる。「マオくん、ありがとお。おなか空いてたの~」
「おかわりありますから、ゆっくり食べてくださいね」
「うん!」
ライティエさんは、早速お皿を手にして、スープをごくごく飲んでいる。熱いと思うのだが……。
しかし、ほかもライティエさんと同じような反応だった。口々にお礼を云って、とにかく食べている。俺はセロベルさんにこそっと云う。「大変だったんですね」
「まあまあだな」セロベルさんは割りと落ち着いていて、フォークで麺をくるくる巻いている。「警邏隊はまちをまもるのが仕事だから、なきごとは云ってられねえよ」
「今年は試験が長引きすぎだわ。流石にきついよ」
メイラさんが半分くらい麺をすすり込んでからぼやいた。ヨーくんとバルドさんが頷く。ライティエさんがお皿を置いた。「マオくん、おかわり!!」
ライティエさんにおかわりを運ぶ。今回はレント内の至る所で魔物との戦闘が行われ、壊された建物は十や二十ではきかない。
さいわいなのは、重傷者は出たものの、死者は居ないこと。重傷者に関しても、癒し手が治療して、重篤な状態は脱している。
「運搬は今夜からすか」
ターツァさんが云った。メイラさんが頷く。「とっととやっちゃわないと、また暢気なロアの奴らがばんばん還元しはじめるからね」
「ああ、面倒すね」
ターツァさんがテーブルへ突っ伏す。運搬って、とセロベルさんへ訊く。ごみを分割して、近在の村の畑へ運ぶらしい。それでどうなるんだろうと思ったけれど、そこで還元してしまえば、素がひとところにかたまる事態は防げる。
ただし、警邏隊が十数人体制で見張っておくらしい。そこに魔物の襲撃がないとも限らないから。