異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「で!!」
ユラちゃんがぴょこんと飛び跳ねた。俺を指さす。「あんた、なに暢気にしてるのよ?」
「え?あー、うん。色々あって?」
「わたし達はあんたを助けようと思って」
「うん。ありがとう」
お礼を云うとユラちゃんは黙った。
サキくんがにこやかに云う。
「あのう、囲まれていると緊張するんですけれど……」
「ああ、そうだよね。全員さがって」
私兵達に云った。「壁際で待機」
今度はエルンがなにも云わなくても、そのようになった。俺は頷く。「折角助けに来てくれてなんなんだけど、俺ちょっと用事があってさ」
「なによ用事って」
「色々とね」
俺は丸テーブル越しに、ウロアの様子を見た。床に仰向けに倒れて、浅い息だ。気を失っているらしい。トゥアフェーノ用の嘔吐剤をあれだけ服んだら、そら辛かろう。俺は平気だけどね。
名簿をとりあげて、ウロアを示した。
「そのひとと賭けをして、勝ったんだ。だから、財産の処分をね」
「しょぶん?」
グエンくん、リュー達が目を瞠る。俺は名簿をぱたぱたさせた。
「そ。処分」
「マオ」
グエンくんが叫ぶみたいに云った。けれど、続かない。髪をさらさらさせて、小さく頭を振っている。
リューが喚いた。「冗談じゃない。グエン、お前が無責任なことをしたから!」
「でも、決闘はきちんとしたものだった」
グエンくんが平坦に返す。それは、きちんとしたものだろう。ウロアは俺からすべて奪うつもりだった訳だから、後で書類やなんかの不備をつかれないよう、細心の注意を払っていたに違いない。
「あ」俺は名簿を丸テーブルへ置いた。「リオちゃん」
「なあに?」
リオちゃんは、こんな状況でもいつもの笑顔を見せてくれた。なんだかほっとする。
「リオちゃんって、商会を持ってるんだよね?ちょっと訊きたいことが……」
リオちゃんは、リオにできることならっ、とスキップでやってきた。
「わたしとリッターも商会くらい持ってるわよ」
ユラちゃんがリッターくんの腕を両手でとって、引っ張る。しかしリッターくんは動かない。ミューくんがそちらへ近寄る。
「行けよ」
ミューくんがリッターくんの太腿を前蹴りした。途端にリッターくんが動き出したので、ユラちゃんが転びそうになる。
サキくんが苦笑いで、ミューくんに手巾を差し出した。「ミュー、顔を拭いたほうがいいよ。ジーナがこわがってる」
「ああ、ありがとうサキ……」
ミューくんは自然に手巾をうけとって、軽く顔を拭った。ジーナちゃんがむくれる。「こわがってなんかないわ」