異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
再びお握りをつくっていると、ツァリアスさんがたまご焼きをぽんとなまいたへ置いてから云った。「マオさん、もしかして……シアイルの出身ですか」
「え」ツァリアスさんを見て、それから目を逸らす。「えーと……えへへ」
言葉を濁すと、ツァリアスさんは俯いて、てきぱきとたまご焼きを切った。
「すみません、詮索するつもりはなかったんです。ただ、その料理は、シアイルのものに見えるので……」
「……そうなんですか?」
「ええ、そもそもは荒れ地料理だそうですが」
あ、やっぱりそうなんだ。
多分……俺みたいに「よそ」から飛ばされてきたひとが居たんだろうな、過去にも。そういうひと(もしかしたら、「ひと達」)がお握りを伝えたのではなかろうか。マドレーヌも荒れ地菓子だって云ってたし。
手をゆすいで、お握りをへぎで包む。麻紐でくくった。リボンだと流石に可愛すぎる。お菓子には合うけど、お握りっぽくはない。
「シアイルは、ごたごたが続いているみたいなので」
ツァリアスさんが凄く低く云った。「マオさんも、俺みたいに、逃げてきたのかと思って。……でも違いますよね。すみません、忘れてください」
「いえ……」
ごたごたが続いている、かあ。なんだか不穏な感じ。ユラちゃんやリッターくんは、大丈夫なのだろうか。
「マオさん」
アーチの下から、サキくんがにこやかに云った。「例のお客さんですよ」
お握りをつくり終えて、おもち用にプランテーンとお芋を蒸していた俺は、そちらを向く。例のお客さん?
思い出すのに時間がかかった。多分リッターくんだ。サキくんが、いたずらを楽しんでいる顔だから。
俺もにやっとしてしまった。ツァリアスさんに後を任せ、食堂へ向かう。ジーナちゃんがついてきた。「お客さんって、なあに」
「昨日色々あってさ」
ジーナちゃんは小首を傾げる。俺は苦笑い。
サキくんが俺の手をとって、恭しくエスコートしてくれる。お茶を注いでまわっていたミューくんも、心配そうな顔でやってきた。「サキ、なんか知ってるの?」
「見てからのお楽しみ」
「なんだよ……」
うわお、出入り口の傍に仁王立ちしているリッターくんの表情の険しいこと。ほかの感情はほぼ出さないけど、怒りは顕著だなあ。
停まった。サキくんが手を下ろす。にっこり笑うと美少年さが際立った。
「お連れしましたよ」
「……手数をかけた。ありがとう」
リッターくんは地を這うような声を出し、表情をなくす。その後ろには、紺色の上下と白っぽいローブを身につけた、焦げ茶色の髪の男のひとが立っていた。銀のアクセサリで決めている。派手できざな感じ。ユス商会の偉いひとだと思う。
リッターくんが片膝をついたので、ざわめきが起こった。ユス商会のひとも啞然。
「経緯はどうあれ約束を違える結果になったこと、ロヴィオダーリ家を代表して謝罪する。申し訳ない。ゆるしてくれ」