【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】
僕の狙いは、集まった枢機卿たちの中から『無能で扱いやすく、かつ僕に絶対的な利益をもたらす者』、あるいは『僕の計画に完全に息がかかった従順な者』を選び抜くことだった。
その男を次期教皇の候補として擁立し、現在の教皇ユリウス6世の最後の聖断として『正式な後継者』に指名させる。
そうすれば、近い将来に教皇が薬物で死亡した後も、新たな教皇を傀儡として、僕は永遠にこの教皇庁のトップに、影の支配者として君臨し続けることができるのだ。
『完璧な計画ね、カース。貴賎を問わず世界中の人間を誑かし、完璧な楽譜通りに復讐を果たし、今度は神の代理人の座まであなたの操り人形にするのね……。ふふ、大層な信仰を掲げた聖職者たちがみんな、あなたの歌声と美貌の前に平伏していくわ』
脳内で『私』が、ゾクゾクとするような歓喜と冷徹さを孕んだ声で微笑む。
((ああ。僕からすべてを奪った世界だ。今度は僕が、この聖座の影から、世界のすべてを僕好みの旋律に調律してあげるのさ))
ベッドの上で日に日に衰えゆく教皇の命の灯火を横目に、少年は、神に仕えるはずの枢機卿たちを次々と手の平の上で転がしていく。
「カース殿、次の法王庁の体制についてですが……」
「ええ、すべては神の御心のままに」
((――つまり、僕の望むままに、ね))
王都の頂点に君臨する神の家は、いまや一人の麗しき少年の野望によって、より深く、より甘美な『影の王国』へと変貌を遂げようとしていた。