リグ・ヴェーダ 詩訳 ― 火の神が歌う世界の始まり
1
インドラよ、我らへの汝の援助は千あり、
栗毛馬の主よ、選り抜きの糧は千あり。
我らを活気づける千種の富を汝は持つ。
価値ある財が、
千々に我らの近くへやって来んことを。
2
最も聡明なるマルトたちが、
高き天より携えし最上の賜物と、
保護とをもって、我らに近づかんことを。
最も高貴なる馬らの隊列が、
海の極限の果てにおいてすら、
疾走するいま。
3
人知れず動くひとりの女性が、
彼らにぴったりと付き従う。
男の妻のごとに、
後ろに携えられし槍のごとに、
固く握られ、輝き、黄金で飾られて。
洗練された、雄弁な貴婦人のごとき言葉もまた、
彼らの中にある。
4
遥か遠く、燦然たる、
決して疲れることなきマルトたちは、
若い乙女を共有の所有(伴侶)として密着する。
激しき神々は、
ローダシー(女神)を己の前から追い払うことなく、
彼女が己の友、仲間となることを望んだのだ。
5
解きほぐされた髪と、
英雄の気概とをもつ不滅のローダシーが、
従うことを選んだ時、
彼女は僕たる彼らの戦車へと登った。
雲のごとき運動と、
燦然たる姿をもつ彼女は、
スーリヤ(太陽の女神)の如くに。
6
若者たちは、
栄光に結ばれ、
集いの中で強大なる乙女を、
自らの戦車の上に載せた。
マルトたちよ、汝らの歌が湧き上がり、
奉納物とともに、
ソーマを搾る者が拝礼の中で自らの讃歌を歌った時に。
7
我はこれらマルトたちの偉大さを宣言しよう、
称賛に値する、彼らの真の偉大さを。
固く、強き心を持ち、誇り高き彼女が、
彼らとともに、
幸運に恵まれた女たちのもとへと旅する様を。
8
ミトラとヴァルナは、非難から人々を護り、
アルヤマンもまた、価値なき罪人たちを見つけ出す。
動かされたことなき堅固なものも打ち倒される。
マルトたちよ、選り抜きの奉納物を捧げる者は繁栄するのだ。
9
マルトたちよ、近くにおりても遠くにおりても、
我らの誰ひとりとして、
汝らの威力の限界に達した者はいない。
勇猛なる力において果敢に増強する彼らは、
海のごとくに、
敵どもをあたり一面取り囲んだ。
10
本日、我らがインドラの最も愛しき友であらんことを。
明日、戦いにおいて彼を呼び求めんことを。
かつて我らがそうであったように。
新しい力が毎日我らに付き従わんことを!
我らとともにあり給え、英雄らのうちのリブクシャンよ!
11
マルトたちよ、詩人たるマーナの息子、
マンダーリヤによって歌われた、
この汝らへの称賛が、この汝らへの歌が、
我らを養う食べ物とともに、我らに子孫をもたらさんことを。
我らが十分な豊穣の中に、
活力を与える食べ物を見出さんことを!
解説:荒ぶる男神たちを魅了し、戦車に並び立つ「女神ローダシー」
第167讃歌は、武勇の神インドラと暴風の神群マルトたち、そして彼らの車に同乗する女神ローダシー(あるいは言語の女神ヴァーク)に捧げる全11節の讃歌です。
千の援助を携えたインドラと、大気の果てから駆けつけるマルト神群。そして何より、荒ぶる男神たちの戦車に乗り、太陽のごとく燦然たる光と洗練された言葉を放つ女神ローダシーの華麗な存在感が色鮮やかに描かれた、美しくもダイナミックな一曲です。
全11節という研ぎ澄まされた構成の中に、荒々しい暴風神マルト群の武勇と、彼らのヒロインとして光り輝く女神ローダシー(および言葉の女神ヴァーク)の神聖な華やぎが美しく交錯する傑作讃歌です。
* 1–2節:千の援助を携えたインドラと、大気を奔るマルートたち
1〜2節では、冒頭で主神インドラの絶大な援助と無数の富が祈願され、続いて大気の果て(海の極限)から最高の駿馬を引き連れて駆けつけるマルート神群の疾走感が描かれます。
* 3–7節:解きほぐされし髪のヒロイン・ローダシーの登壇
3〜7節は本讃歌の最大のハイライトです。男神たちの集団の中に、黄金に飾られた洗練された「言葉」や、髪を解きほぐし勇猛な魂を持つ「女神ローダシー」が描かれます。荒ぶるマルートたちは彼女を排除するどころか、喜んで自分たちの戦車に招き入れ、太陽のごとき輝きとともに世界を巡ります。
* 8–11節:限りのない神威と、毎日新しく更新される力
後半では、どんなに堅固な敵も打ち砕くマルートたちの無限の威力が歌われます。過去の栄光に甘んじることなく「新しい力が毎日我らに付き従わんことを」と願い、詩人マーニャによる永劫の一族繁栄の祈りで締めくくられます。