【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「探すべきは魔物工場か、悪魔レストラン……」
会計仕事でお金を得た俺は部屋を借りた。
グルデンダカンでは独自の通貨を利用している。
奴隷がお金を貯めても外じゃ使えないので、脱走する気を削ごうという小狡いやり方だ。
部屋の中で一人、俺はより具体的な目標について考えていた。
奴隷がたくさんいる。
そのことから奴隷の死体を使って魔物を作り出している工場とも呼べるような場所があることは、ほぼ確実だと見てもいい。
しかし教会はもう一つヤバいものがあるんじゃないかと思っていた。
「悪魔レストランがあるなら……潰さなきゃな」
悪魔は人、あるいは人の魂を喰らって強くなっていく。
死体をどこからかちょろまかして魔物を作るぐらいならいいが、生きている人が度々失踪してしまえば教会にすぐにバレる。
だが奴隷の国では誰かがいなくなっても気にされない。
当然教会も関知しない。
そこで悪魔が人を喰らうレストランのようなものがあるのではないかと見られている。
魔物工場も危険だが、悪魔レストランはもっと危険だ。
悪魔が安全に人を喰らえる環境がある。
つまりはリスクなく悪魔が強くなってしまえる場所があるということなのだった。
「しかし当然町中にはなさそうだな」
人間を食べる悪魔の施設が堂々と町の中にあるはずはない。
一応町の中を見て回った。
いかにも怪しいお店はいくつかあるが、奴隷が経営している店なのだからある程度怪しいものがあるのも当然の話だ。
「お化けは相変わらずそこら中……嫌んなる町だ……」
教会が関わらない、死者が多い、奴隷という抑圧された人間。
幽霊が多くなるのにも納得の劣悪環境。
俺に与えられた強力な武器である霊視は今俺に頭痛を与えている。
普通の町よりはるかに幽霊が多い。
しかもちょっと闇落ちしたような暗い奴らばかり。
死者を労ってくれるような環境にもないので、幽霊もそうそう成仏しないようだった。
今いる部屋にも以前の住人なのか幽霊がいた。
俺のことを追い出そうなんて話してたバカだったので強制的に成仏いただいた。
「異様に幽霊が少ないようなところはない……あとは行きにくいところばかりだしな」
パッと見た感じで明らかに幽霊の数が少ない場所というものはなかった。
悪魔がいると一般的に幽霊は少なくなる。
見て回れるところで幽霊が少ない場所がなかったのなら、簡単なところに悪魔はいない。
残っている場所はヤバい人が多いところか、関係者以外立ち入れないところか、死ななきゃ行けないところだった。
「ひとまず……関係者になれば入れるところを目指すか」
俺は軋む椅子から立ち上がり、家を出る。
普段の町中は多少薄汚れている以外、思いの外普通の雰囲気がある。
人がいて、家があり、生活がある。
身分というか、つける仕事による貧富の差はかなりはっきりと出ているが、常日頃から荒んでいるわけでもない。
しかし油断はできない。
奴隷の町であるということは元犯罪者である奴が桁違いに多いということでもある。
すれ違う奴の手癖が悪い確率も高い。
せっかく得られたお金をスリ盗られることがないように気をつけねばならないのだ。
「エリシオ、ようやく来たか」
俺がやってきたのはクルステスファイトクラブと書かれたデカめの建物の前。
そこではギヴォスたちファイトクラブの連中が待っていた。
「中に入るぞ。緊張はしていないな?」
「ノミの心臓なので、もう死にそうです」
「ならもっと死にそうな顔して見せろ」
今日は俺の初試合の日であった。
ファイトクラブでやることといえばファイトだ。
つまり人前で戦うのが仕事になる。
こんなところではコツコツとファイターを育ててからなんて悠長なことはしてくれない。
今の力で試合に出させられる。
そりゃあ、俺だって少しは緊張する。
あんまり有名になりすぎて他からスカウトが来たらどうしようかとドキドキだ。
「早く自分ところで試合できるようにしたいですね」
「お前がそうしてくれたら感謝するよ」
ギヴォスのところは正直あまり強いところではない。
いいファイトクラブになると自前で試合のスペースを持っている。
最上級になると外の観客が入る闘技場を保有していて、試合の収益を持っていく。
そうたところに行けば早めに目立てる可能性もある。
しかし逆に人が多くて目立てないことや競争の激しさもあるだろう。
だから逆に小さいところを選んだ。
その方が、劇的だから。
「ギヴォスだ。うちのファイターたち」
「ファイターは向こうを降りろ」
建物の中に入り、観客とは違う階段を降りていく。
「今日負けたら割とまずいことになる。クロウジイをお前が使い物にならなくしちまったから責任は取れよ?」
「あんたがお試しで出さなきゃあんなことにならなかったのに」
クロウジイはギヴォスのファイターの中でも強い方の人だった。
今日の試合も本来は俺じゃなくてクロウジイが出る予定なのだったが、俺が腕折ったので代わりに出ることになった。
「相変わらず口が減らないな。それで負けたら俺がぶっ殺してやるからな!」
「勝ったら靴舐めてもらいましょうか?」
「この……!」
あまりバカにするとスキンヘッドがゆでダコみたいになる。
「まっ、勝ちますよ」
あまり見せるつもりはないが、いざという時の切り札に魔力もある。
何も魔力を扱える人は教会の騎士だけじゃないから、魔力ぐらいは使ってもいいだろう。
ただすごく目立つので魔力は本当に奥の手として取っておくつもりだ。