召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲 vs. 超能力者(後編)
CIAの超能力者集団に突然襲われた最神玲だが、彼らの襲撃を難なく撃退して、しかも彼ら全員を捕縛した。そして彼らを操っているCIAのトップの所にこれからお礼参りに向かうところである。ところで、実は世間一般に対しCIAの長官室はどこにあるかのは公表されていない。まあ、当然と言えば当然なのだろうが、玲はとりあえず、CIA本部の最上階フロアーに転移することにした。大体一番偉い人は何故か最上階に住みたがることを知っている玲としては、先ずはこの階で探すことにしたのだった。そして恐らくこのフロアーは防犯カメラを始めとしたセキュリティシステムが完備されていると予想されるが、そんなことを気にすることは無く、堂々とその場に転移したのだ。これはある意味、今後の警告にも繋がるだろうと予想してなのだが。そして先ずはステインの目隠しを取って、長官室がどこなのかを案内させることにした。ステインもまさか本当にラングレーに戻って来たとは、今この時も全く信じられない表情で呆けていたのだが、玲に突っつかれて何とか正気に戻り、玲を長官室に案内した。流石に午前7時近いが日の出まではまだ少し時間があるためか、このフロアには誰もいないのは当然で、部屋も鍵が掛かっていた。だが、玲はそんなことに構うことなく、全員を連れて部屋の中に転移した。
さて部屋の中を見渡すと、玲の住む住宅が2棟分は入りそうなスペースがあり、だが窓の類はそこにはない。恐らくは外部からの攻撃とか盗聴、盗撮などへの対策だろうと思うが、とりあえずステインに対し、バーンスタインへの緊急通信とかないのかを聞いてみた。大体、仕事が済んだ場合に直接相手に連絡すると思われたので、そう尋ねたのだ。すると、ステインは何やらケビンに話しかけていた。恐らくケビンがこのチームのリーダーなのだろうか。そして、ケビンのコートの裏ポケットにスマホが入っていると教えられたが、当然ぐるぐる巻きにしているので取り出すことは出来ない。面倒くさいが一度ケビンに対し降霊召喚門を設置して魂を分離し、大人しくしてもらった。そのうえでビニール紐を解き、ある程度解いたところでコートの裏ポケットにあったスマホを取り出した。
ところで、玲のその様子を見ていた他の連中は、なぜケビンは意識を失ったのか不思議に思っていた。恐らく彼らは、ケビンは玲がビニール紐を解いた隙を狙って玲の自由を奪うことを考えていたのだろうが、当然玲にはそんなことはお見通しであった。それから再びケビンを縛り上げて、魂を元に戻し、ステインからどのように連絡するのかを聞いてそのように操作した。やはりと言うか、何かしら手続きを経ないと直接相手に伝わらないようで、何とか呼び出し音が鳴った時に、玲はスピーカーモードにしてステインに任務が完了したことをケビンに伝えてもらい、ケビンから相手に話してもらうことにした。ちなみに、相手が英語で応援要請しても玲としては特に問題ないため、ステインには訳さなくてもいいよ、と伝えておいた。それを聞いたステインは我が耳を疑ったようで、「本当に訳さなくてもいいのか?」と聞いてきた。何か仕掛けて来れば困るのはそちらだから、ということをステインに言って、彼はケビンに対しケビンとバーンスタイン長官とのやり取りは通訳しないと伝えた。ケビンも同様に驚いたようだが、そのうち長い呼び出し音の後で漸く相手が電話に出た。そしてケビンは相手と何やら話し出し、直ぐに電話を切った。何となく救援要請している雰囲気ではなかったようだが、まあそれはどちらでも良いということである。だが一応念のためステインに、「長官はここに来るの?」と聞いたところ、「はい、直ぐにこちらに向かうということです」と答えたので、これで玲としては一つ目的が果たせた。いや、それよりもちゃんと話をつけて、場合によっては更に上に向かうかな、と考えたりした。
玲は物珍しそうに部屋の中をあちこち歩き回って物色していたが、30分程すると突然部屋のドアがバンと開けられた。玲がビックリして振り返ったその瞬間、数名の特殊部隊っぽい連中が侵入してきて、その後から長官らしき人物が現れた。玲もこうなることはある程度想定していたので、特に驚くことなく入口に視線を向けたままその場にじっと佇んでいた。そんな玲を見ていたステインら4名は、なぜこの男は何も感じないのか、こうなることが分かっていて、だがそれに十分対処できることへの余裕なのか、もしかして自分達は関わっていけない人物を相手にしたのではないかという様々な思いや感情が錯綜し、遂には恐怖心に駆られてしまった。そんなことはつゆ知らず、玲はステインに対し、
「あの男がここのトップなの?」
と尋ねた。ステインはうん、と頷くだけだった。それからその男が何やら話し出したので、ステインに通訳をお願いした。
「そこの君、今直ぐ手を上げて投降しなさい。
さもなくば、彼らに対応して
もらうことになるぞ!!」
と玲に対し警告を発していた。勿論玲はそれに従うつもりはなく、即座に特殊部隊の連中の足元に対し降霊召喚門を展開し魂を分離した。その途端、特殊部隊員は全員急に意識を失ったかのようにれたため、バーンスタインは何が起きたか理解できずに呆気に取られていた。さて、次はこの男の番だな、と言うことでニヤニヤしながらバーンスタインに近づいた。そんな玲の姿を見て逃げ出そうとするも、玲は足元にトラップを召喚して、逃げ出そうとするバーンスタインを転倒させた。それから、その男の首根っこを摑まえて部屋の中に連れ戻し、ソファーに座らせてから尋問を始めた。ステインが訳した話だと、どうやら、この男が独断で行ったことのようだった。だが、玲としては迷惑千万のため、やはりトップに抗議しようと思い立ち、一度特殊部隊員らの魂を戻した後、ステインとバーンスタインを連れて、この国のトップが住む場所に向かって転移した。なお、残された超能力者達は、目の前から3人が一瞬で消えたことに、驚き以上にしっかりと恐怖心が植え付けられた。あの男には絶対手を出すなと言う警告と共に。
さて、玲と他2名はこの国のトップが住まうホワイトハウスにやって来た。そして彼らの目の前には、この国のトップが就寝中である。まさかこんな時間にこんな所にやって来たことに玲以外の者達には、自分の首が飛ぶのではないかと言う危機感と絶望感が漂っていた。玲はそんなことは気にすることなく、先ずはこの就寝中の男にあることを確認しようと、魂の尋問を始めることにした。その前に、他の2人には暫く気を失ってもらうことにして、いよいよ始めることにした。
「この国が掴んでいる
召喚術師に関する情報を教えろ」
とスマホの翻訳機能を使って目の前の男の魂に尋ねた。その結果、彼らの認識では召喚術師は異星人であるという認識のようだ。これはある意味正しいのだが、念のため具体的な召喚術師の名前を尋ねた。すると、玲と物部かすみ、そしてあと一人。
「え、まじかこいつら!」
といつも冷静な玲にしてはかなりの驚きと共に怒りが沸いてきた。なぜかと言うと、名前を上げた召喚術師が「ヴェルハム」だったからである。もしかしてこの国とあの教団は何か繋がっているのか気になったので、それを確認したところ、どうやら教団と繋がりはないが監視対象ではあるようだ。確かに大っぴらに転移とかさせていたから、嫌でも目に付くよなと思う訳なのだが。そしてそれ以外の召喚術師については分かってないようだった。もしかしたらタチアナさんが監視対象になっていたかと懸念したが、それはなかったので少し安心した。後は召喚術に関して知っている情報を尋ねた所、転移術と後は玲が行った降霊召喚術を知っていることくらいであった。核心となる契約や創成召喚に関する情報は持ってないようなので、それはまず安心材料であろう。だが転移術を知っているとなると、恐らくは軍事利用が考えられるので、この点は今後も注視しておくことにした。そして、玲としてはこれ以上聞くことは無くなったので、全員の魂を元に戻した。この時、もし玲に野望なり野心があれば、もっと重大な情報でさえ聞き出すことは出来たのだが、御存じのように彼は召喚術以外に興味はない。そこは、全地球人にとっては幸運と言うべきだろう。
さて、目の前の人物がまだ起きそうにないので、玲は着ていたコートの中から何やら茶色い棒のような物を(召喚して)取り出した。それは最近のかすみのお気に入りの小道具である、通称マキザッパ。そう、あの新喜劇で有名な茶色い棒である。このマキザッパは、作りが単純で、単に新聞紙を丸めてそれを茶色い布で巻くだけである。従って叩かれてもいたくはないのだが、ところでどうやってかすみはこのような物を手に入れたのか?実は、丁度1週間前にかすみは地元の友人からお笑いのライブに誘われて大阪に遊びに行っていた。その時のイベントか何かの景品で手に入れたらしい。そして嬉々として帰宅したかすみは早速、玲に対しあれをやらせていたのだ。そう、マキザッパと言えば 乳首ドリル である。残念ながら玲は全く訳が分からない状態だったため、終いにはかすみが怒り出す始末だったが、何とか「ドリルせんのかーい」だけは覚えて、かすみもそれで満足したのだった。その時のマキザッパを玲はこっそりと召喚グッズに加えていた。何時かかすみが舟を漕いでいる時にこれを使おうと心に誓いながら。そんなマキザッパがまさかここで使えるとはと思うと、何だか玲は楽しくなってきた。だが、新聞紙で出来ているとは思いもしないバーンスタインとステインは、まさかこの男は大統領を殺す気かと半狂乱に陥って騒ぎ出したのだった。だが、玲が大統領の頭を叩くも、乾いた「パカン、パカン」と言う音を立てるだけで怪我をすることもなく、大統領はそのまま眠り続けていた。そして玲が何度かその頭をマキザッパで叩いたところで、漸く当人は目を覚ましたのだった。と同時に、叫び声を聞きつけてやって来た警護の連中が部屋の外で騒ぎ出したが、玲はそんなことにお構いなく、ようやく目覚めた男に対しこう伝えた。
「大統領。僕は召喚術師です。
今日はここにいるCIA長官の
バーンスタインが送り込んだ
超能力者集団に襲われました。
この落とし前をどうつけてくれますか?」
この言葉を心の動揺が収まらないステインは、言葉を噛みながら何とか英語で大統領に伝えた。起きたばかりでまだ事態をつかめていない大統領だが、自分の寝室に不審者が3名いることには、驚きと共に怒りを覚えたようだ。そこで何やら喚き散らしだしたが、ステインからサモナーと聞かされた途端、何やら思い当たることがあるのか、急に顔から血の気が引くように青ざめて行った。もしかして、あいつと同じことが起こるのかと言う不安と恐怖心と共に。そして何とか言葉を発したのだが
「いや、俺は知らんぞ。
そんな命令出してないぞ。
おいフレッド、これはどういうことだ?」
と助命を乞うのは何となく分かった玲である。そして後ろで怯えているバーンスタインに対し何やら詰問している様子も分かった。残念ながら、バーンスタインの口から言葉が出ることはなく、極度の緊張から遂に気絶してしまったのだった。まあ、どっちでもいいか、と言うことで、再度警告することにした。
「まあ、今回はこのバーンスタイン長官の
単独行動のようなので不問に付しますが、
もし同じようなことが僕と相棒にあったら、
その時はきっちりと落とし前を
つけてもらいます」
と大統領の目を見てそう伝えた。多分言葉は分からないだろうが、雰囲気で何を言っているかは分かったのだろう。ステインが訳し終わった時に、何度も頷きながら「分かった、約束する」と言った。さてそろそろ外の連中が押しかけてきそうに感じたので、玲はステインに、「僕の用件は終わったので、これで帰るよ」と言いおいて、玲は部屋の隅の暗がりに向かい、そこから転移して姿を消した。
さて、無事に自宅に戻った玲だが、時刻は午後10時少し前である。折角美味しい塩ラーメンの余韻に暫く浸る心算だったのにとんだ邪魔が入ったと、また何やら腹立たしくなったのだが、これで少なくともあの国からの干渉はなくなるかな、と少しは楽観的になったりした。それから、ゆっくりと風呂に入って寝ようとするも、なかなか寝付かれないため、結局は何時もの召喚術の研究を始めたりした。そうやって夢中になっていた時、ふと時計を見ると午前3時半を回ったところだったので、この日はそれで切り上げてそのまま床に就いた。
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さて、突然の最神玲の訪問を受けたアメリカ合衆国大統領であるが、玲が転移した直後、漸く大統領の寝室に入ることが出来た側近と警護官達は、その場の異様な光景に目を見張った。大統領はベッドに起き上がって無事であることは確認できたが、その傍にはビニール紐でぐるぐる巻きにされた年配の男と、その足元近くではCIA長官のバーンスタインが気絶しているという、一体ここで何が起きたのか理解できない状況にあった。そこで側近が大統領に何があったかを尋ねたが、それを言うことは出来ないと拒絶された。そして大統領のベットの傍で立ち尽くす、ビニール紐でぐるぐる巻きにされた男に対しては、大統領からはこのことは口にするなと厳命されたため、最初は彼も何も話さないことに決めていた。だが、警護隊長がまさか自分の目の届かない抜け穴があったのかと額に汗を滲ませてその場で立ち尽くす姿を見て、自分はCIAの超能力部隊に属しており、ここにはある男に脅されて瞬間移動で来たのだと説明し始めた。その証拠と言うことで、先ずはその場で紐を解いてもらい、ステインはその場で瞬間移動を披露した。それを見た大統領をはじめ警護隊長は、瞬間移動を目にして驚愕したものの、そのような危険な存在をCIAは隠していたのかということになり、大統領自身もその話に乗る形で、CIAを追及するに至った。勿論その時点でもバーンスタイン長官は気絶したままなのだが、当人の預かり知らない所で、話は進められた。そしてステインが連れだされる時、大統領は彼に名前を尋ねた。そして「彼の処遇は俺に任せてくれ」と伝えることで、ステインはこの時点で大統領に身元を保証されるに及び、一切の罪に問われることなく服役を免れることになった。
それから、オーバルルームに向かい国防長官のヘンドリクソンを呼び出し、今朝の出来事を彼に話した。
「全く、フレッドの馬鹿はとんだ事を
しでかしたもんだ。あいつは首にするが、
後はCIAをどうするかだな」
「大統領。まさかCIAの解体などは
されないでしょうね?」
そんなことできる訳ないだろう、と笑いながら答えたが、それよりもあの召喚術師を怒らせたことに今は悔やんでも悔やみきれないのだった。恐らく彼との繋がりは無くなったとみて良いだろう。そうなると、今進めているサモネル教団との接触か、あるいは、
「そう言えば、ダニーの所で進めている
召喚術師見習いの件だが、
あれはその後どうなっているんだ?」
「はい、まずは有能な者を選抜して
日本語を取得させているところです。
それが終われば、彼は弟子にすると
言ってましたので、その後になるかと」
「はあ、何とも悠長な話だが、
確実性から行くと、そちらが確かだな」
何やら腕組みをして考え込む大統領である。そして、
「場合によっては、その計画をさらに
進めることも考えてだな、
予算を増額することを検討してもいいぞ。
勿論、これに関してはこちらで何とかするがな」
「有難うございます。
まずは最初の弟子になる人物が
どこまで出来るようになるかを
見届けてからでも遅くはないかと思いますが」
分かった、その件はダニーに任せたぞ、と言って、大統領はその後CIA長官の後任人事に着手するのだった。
そして、その日の正午、日本では玲が召喚術の研究をしている夜中になるが、CIA長官のバーンスタインが職務遂行が困難な状況になったという理由で解任し、新しい人事がホワイトハウスの報道官から発表された。