召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
物部かすみ、親友の結婚式に参加する (中編)
高校時代の親友たちと再会し、何やらかすみを相手に話が盛り上がっていた時、どうやら挙式の準備が出来たのでチャペルに集まって欲しいとスタッフから声を掛けられた。そこでかすみ達4名は、指定されたチャペルに向かった。ガラス張りの天井から降り注ぐ初夏の日差しの下、白くキラキラと輝くチャペルにえられている木目の美しい木製のベンチの中程の列にかすみは腰かけて、手元に式次第を見ながら、「あぁー、またこの讃美歌を歌うのかー」などと考えながらボーっとしていた。そのうち、まず新郎が先に登場し説教壇に立つ神父の前にやって来た。かすみとしては、特に興味がないのでそのまま目線は手元の式次第に向けていたが、何かの気配を感じたのか、ふと視線を前方に向けた。すると、
「えっ!」
と小さな声を上げてしまった。隣にいる明日香がかすみの耳元で「かすみ、どないしたん?」と囁いてきたので、「あっ、ごめん、ちょっとしゃっくりが出かかってん」と、こちらは小声で明日香に謝りながら何とか誤魔化した。一体かすみはどうしたのかと言うと、新郎の直ぐ傍に女性の姿を認めたのだ。その女性、かすみから見ると普通にそこに同伴しています、にしか見えないのだが、場の雰囲気からしてそれは絶対に有り得ないはず。そうなると、やはり霊体になるのだろうか。だがかすみは、何か違和感を覚えていた。何がと言われると明確に説明できないもどかしさがある。だが、何というのか、この仕事を何年もやっていると、いつも霊体から感じる波長と言うか何かそう言ったもの、それが目の前のあれからは感じられないというべきだろうか。とりあえず、今は静観するとして、式が終わったら玲に聞いてみようと心に留めた。それから間もなくすると、新婦の希美がチャペルに入って来て、彼女の父親と共にバージンロードを歩く姿を見ると、何やら感動を覚えてしまった。そして隣にいる京香やその向こうに座る美鈴と同じようにスマホで動画を撮りだした。今日の希美は一段と綺麗に見えた。やはり、結婚するってこうなんかな、とかすみは自分の結婚する姿を想像したりした。その時、隣に居るのが果たして誰なのだろうか?「まあ、あいつだろうけどな」
その後かすみを含む参列者一行は、芝生の青さがまぶしい中庭に移動した。そこで、結婚式恒例の「ブーケトス」が行われるというのだ。かすみも、中学生くらいの頃に親戚のお姉ちゃんの結婚式に参列して、ブーケトスがされる様子を目の当たりにした。将来自分もお姉ちゃんの様ににあんなことしてみたいな、と感じたことをふと思い出し、だが現実は受け取る方が先だったかと考えた途端、少し苦笑いしたくなった。
ところで希美の結婚式には、彼女と夫の会社の関係者は出席していない。これは出来るだけ親族と自分達の友人を招くだけにしたいという彼女たちの意向に沿って検討されたようだ。そのため、かすみ達高校時代の親友や大学時代、あるいは同期入社の同僚などの参加が多くなり、そのため、
「うわー、めっちゃ競争率高いやん!」
と京香が嘆くように、ブーケトスを受ける女性が結構いるのだった。そんなことを言っているうちに、新郎と新婦が登場した。そして、スタッフから今回はブーケトスではなく、ブーケプルズを行いますと案内された。かすみは「何なんそれ?」となったが、これは人数分のリボンが用意されており、1本だけがブーケに結び付けらている、要するにのようなものである。
「なるほどね、これやったら公平やもんな」
と明日香が言うように、ブーケの奪い合いとかなく、平和的な方法である。そこで独身女性陣は、それぞれリボンを希美から受け取り定位置に付いた。そして合図とともに一斉にリボンを引っ張った結果、
「えー、なんでなん!!」
とは、京香、明日香、美鈴の溜息である。そてし当たりくじは、見事かすみが引き当てたのだった。
「全く、かすみ、今日はあんたが主役か?」
「ホンマやで、うちらかすみのための
引き立て役見たいなってない?」
「えーん、あたし欲しかったよー」
と京香、明日香、美鈴はそれぞれ口にした。「いやいや、偶然ですよ、偶然」とかすみはを指で搔きながら呟く。そして見事当たりくじを引き当てたかすみに、希美からブーケが渡されたのだった。
「次は、かすみの番やね。期待してるで!」
と希美から言葉を掛けられたが、どう返せばいいか迷ってしまった。気持ち的には「頑張るで」だが無難なところで「有難う」と返事をした。
その後親族と友人を交えた記念撮影に移るのだが、やはりかすみにはあの霊体が気になってしまう。そして集合写真の時も、しっかり新郎の背後にその霊体は居るのだった。もしかすみと同じレベルの霊能力者がこの写真を見たら、恐らく卒倒するだろうことは容易に想像出来たりした。いや、もしかしたら親族の誰かが写ったと勘違いするかもしれないな、と思わなくもないのだが。さて、写真撮影を終えた後、かすみを含む高校時代の親友組は、村上希美と少しだけ話す時間があり、早速京香がお祝いを伝えた。
「希美、おめでとう。めっちゃ綺麗やな」
「おおきに、京香。それと、みんな、
今日は来てくれて有難うね」
そんな中、かすみだけは少し浮かない顔をしていた。
「どないしたん、かすみ。
希美の目出度い日なんやから、
しゃきっとせな!」
「あっ、うち、分かった!
かすみ、折角ブーケもろうたけど、
彼氏にふられたとか、
浮気されてるとかとちゃうん?」
と明日香に喝を入れられ、美鈴にはあることないこと言い掛かりをつけられ、かすみはパニック寸前であった。
「あぁ、ご、ゴメンね、みんな。
ちょっとぼーっとしてしまって。
それと、美鈴、うちにはまだ
彼氏おらへんからな。
それよりもな、希美。
旦那さん、めっちゃ優しそうな感じやね。
どこで知り合ったん?」
とかすみは、自分に向けられそうになった友人たちの目を反らすために、無難な話に持っていこうとした。案の定、
「そうや、希美、その辺の話
何も聞かされてへんは。
まぁ、後でゆっくり聞かせて
も、ら、い、ま、す、け、ど、ね~」
と京香がニヤニヤしながら希美の脇腹を突っついた。そんなことを話している最中にスタッフが希美を呼びに来たため、彼女は親友たちに手を振りながら退出した。
披露宴は午後2時開宴となっており、まだ30分程時間が余っている。そこでかすみは、一旦トイレに行くことにした。と言っても、そこから自宅に転移したのだが、
「なぁ、玲、今ちょっといい?」
と玲の部屋をノックしたかすみ。「ん?どうしたの?」と言いながら玲が扉を開けた。そしてかすみはそのまま玲の部屋に入って来て、先程遭遇した霊体のことを玲に話した。
「うーん、何とも言えないし分からないけど、
かすみの直感は侮れないからな、
何か違和感を感じたのなら、
そこには何か理由があるはずだよね」
やはり玲もよく分からないということのようだ。仕方ない、玲が分からない問題が自分に分かる訳ではないし、これ以上ここに居ても、トイレに長居していると思われるし、それはちょっと恥ずかしいので、一旦向こうに転移した。
トイレから出て、ロビーを通り過ぎようとした時、新郎の友人グループであろうか、その一団からかすみの耳にある言葉が聞こえてきた。
「全く、純也のやつ、珠代をよく捨てたよな」
「いやいや、やっぱり、親の財力じゃないの」
ん?純也って、希美の旦那になる人だよな?とかすみは疑問に思ったように、希美の相手はという。そして、「確かに、希美の実家って...」そう、彼女の実家は、実は大阪府下で何店舗かの外国製高級車の販売店を経営している。車つながりで希美は国内最大手の自動車メーカーに就職したのだが、ゆくゆくは実家のディーラーを継ぐことになっていた。要するに、かすみと同じようなお嬢様なのだった。うーん、何かきな臭いな、とかすみは思ったが、尤も彼らにそれを確認するのも変だし、まあ希美が幸せになるのが一番だから、ここで波風立てるのは慎むべきだな、と言うことでかすみはそのまま旧友の待つ一角に向かった。
それからすぐに披露宴会場の準備が整ったということで、かすみ以下高校の同級生たちは、会場内の各自の席に向かった。
「うわ~、何かこれぞ結婚式と言う感じよね~」
「これが噂に聞く名古屋式なんか?」
「どやろな、何か昔の映像とか動画で
見たことあるけど、名古屋の結婚式では
上からゴンドラとかに乗って降りてきてたで」
と美鈴、明日香、京香が各々そんな感想を漏らした。確かに昔の名古屋の結婚式はド派手との評判があった。実際、かすみ達の父親、母親世代であれば、嫁入り道具を運ぶトラックは前に進むことしかできず、狭い道を前方から車がやって来て立ち往生した時などは、トラックが後戻りすることは絶対認められない。そのため、先方の車に道を譲ってもらうためにお金を渡す、と言う風習が行われていたらしい。だが今のご時世、そこまですることはなく、やはり若者達の結婚観の変化から、意外と質素というか簡略化する傾向があるようだ。だが、かすみの同級生達は、やはり名古屋、イコール派手な結婚式を思い浮かべてしまったようだ。そんなことを言い合いながら、やがて新郎と新婦の入場となった。部屋の照明が一斉に消えて、スポットライトが新郎と新婦に当てられると、いよいよ披露宴の開宴となるのだが、やはりかすみは、どうしても新郎に付き纏う霊体に目が行ってしまう。いや、本当にあれは霊体なのか?いまだにその謎が解けないため、かすみの心は何かモヤモヤしていた。
披露宴は滞りなく進み、次はかすみ達による余興である。と言っても何か歌う訳でもなく、お祝いのメッセージを読み上げるでもなく、関西出身の彼女達が得意な事、漫才を披露したのだ。ネタ作りは無類のお笑い好きであるかすみが担当した。4人組漫才は中々に難しく、所々にボケとツッコミを入れるのだが、誰がボケて誰がツッコミを入れるかを決めるのも大変であったようだ。そんなことをかすみは、ここ1,2カ月程仕事終わりに練っており、漸く2週間前に出来上がったのだ。そして早速練習と行きたかったが、各自住むところがバラバラのため、結局オンラインでのみの練習となった。そして今日はまさにぶっつけ本番となった。としてあのM〇-グランプリで使われる音楽が会場に流れると、会場は妙なテンションに包まれていく。かすみの書いたネタは、彼女たちの高校時代の話がベースで、それを面白おかしく仕上げたものだった。そして彼女たちの漫才が進むにつれ、会場は爆笑の渦に包まれた。そして最後に明日香が「もうええわ!」と言って無事漫才が終了した。会場からは割れんばかりの拍手に包まれたのは言うまでもない。かすみもネタを作ったかいがあったと満足したが、それよりもぶっつけ本番でも詰まることなくやり切った京香、明日香、美鈴は、高校時代からかすみによって鍛えられてきただけあり、流石だわと感心してしまった。そして、この日の主役である希美はと言うと、目に涙を浮かべながら笑い転げていたのは、かすみの予想を超えた成果であろう。最後は4人でハイタッチをし、希美に向かって「のぞみー、結婚おめでとうー」と叫んで彼女たちの余興は終わった。
その後暫しの歓談となったが、やはりかすみ達の漫才の余韻が残っているのか、かすみ達のテーブルにやって来ては口々に「面白かった」と声を掛けられた。これにはかすみ達はやって良かったと満足したのだった。そして彼女達も早速希美の所に向かい、かすみが「なぁなぁ、希美、どやった?」と感想を求めた。希美も「おもろかってんけど、あれ誇張し過ぎやわ」と笑いながら抗議して来た。それに対し京香が「ちゃうちゃう、あれは、か、な、り、抑えてんねんで」とこちらもやんわりと言い返した。そんな和やかな雰囲気でいる中、かすみは隣の新郎の横に佇む霊体につい目が行ってしまう。あかん、こっちに集中しよう、と笑顔を浮かべながら彼女たちの会話を聞くようにしたのだが、そのうち美鈴が「ねぇねぇ、皆で写真撮ろう!」と言うことで、新郎を交えての記念撮影を行った。最初に美鈴が自分のスマホで写真を撮り、次にかすみと言うとき、あの霊体も一緒に写るのかと思うと気が引けてしまうが、何とか新郎をフレームから外すようにしてカメラに収めた。その後交代で写真を撮り終えた所、司会から新郎新婦のお色直しで一度退出すると告げられたので、彼女たちは自分達のテーブルに戻ることにした。その後は、よく希美の家に遊びに行ったときにお世話になった希美の両親から挨拶を受けて、希美の大学時代の友人たちとも話をしたりして時間が過ぎて行った。