召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
美少女降霊術師の心霊事件簿8: 廃施設の怪異 (後編)
物部かすみはこれで全て終わったかと思ったのだが、まだ更に続きがあった。それは、今誰に憑依しているか、あるいは誰の記憶を見ているのか分からないが、その映像は施設長室を映したものであった。そこには気の狂った男がした様子が見て取れる。人は何かしら後ろめたいことがあった時それを指摘されると狼狽するが、かすみの長くはない人生において、ここまでえた姿を見るのは初めてであった。大ぶりの事務机の前に座ったその男はある資料を手にしており、それを目にした途端、手が震え出し、口が開きっぱなしで涎が垂れるのも構わず茫然としていた。そしてその後自分の額を机の天板に何度も叩きつけ出した。一体その資料には何が書かれているのか?かすみは誰かの霊体を通じた視点でその資料を目にした。そこには、
[○○施設長、
貴殿の背任行為は既に明るみになった。
速やかに警察に自首することを薦める。
――○○苑理事長]
と書かれていた。どうやらこの男は、施設の金を自分の遊興費に充てていたようで、それがどこからか露見したのだった。この時、この男は行方をますことを考えたが、そうなるとこの施設で行って来た殺人と言う快楽を伴う悪事が遅かれ早かれ露見してしまうだろう。そうすると、仮に逃げたとしても捕まるのは時間の問題であろうし、捕まった場合は100%死刑になるだろう。ではこのまま背任について自首したとして、後任の施設長が行方不明者を調べないとは言い切れない。するとやはり殺人が露見され、この場合も死刑確実である。どっちにしても死刑となるのであれば、一層のこと
「く、くそー、折角の俺の楽しみがぁーーー!」
と悔しそうに嘆きながら、机の一番下の引き出しからある物を取り出した。それは宿直室で男性を毒殺した時の残りの栄養ドリンクである。実はこの男が飲んだもの以外全てに毒物が仕込まれており、しかもその毒物は蓋に目立たない穴を開けて注入していたのだ。そして男は、そのうちの1本取り出し、それを一気に飲み干した。そして数分後、自らの吐しゃ物に塗れた机に突っ伏してそのまま死亡した。
その時かすみは、
「えっ、こいつ死んだやないか。
そやったら、何で...」
今まで見てきた映像の人物たちは成仏せずにかすみにこれらの映像を見せつけたのか?
「そっか...多分こいつが邪魔して
成仏でけへんのやな?」
かすみは何気なくそう呟いた。すると、かすみは今度は何かの上に寝かされており、じっと天井を見つめていた。その時、かすみが良く知る人物の顔が視界に入って来て、
「京田さん! 物部先輩が目を覚ましました!」
と大声で叫んだ。そしてかすみは
「ちょっ、佐伯、耳元で大声で
どならんでもええやんか!」
と起き上がりながら佐伯えりに文句を言い出した。尤も佐伯も心配していたのが分かるだけに、その後「佐伯、心配かけてゴメンな」と謝った。そしてかすみはどこかの部屋にある長椅子で横になってたようだが、そこに改めて腰かけた時、かすみの目線の先にはかすみが見た霊体がじっとかすみを見つめていた。ディレクターの京田はその時の様子をビデオカメラに記録しており、後日その様子を確認した所、ぼんやりとだがかすみの目線の先に複数の霊体が居ることを確認した。
その後かすみは、全員が集まったところで自分の不注意で倒れて意識を失ったことに対し謝罪した。そして彼女に何が起きたのかについてに語った。そして最後に、
「全ての元凶は、その施設長室と言う所
やと思います。そして恐らく...」
その部屋に入ろうとした者達は全てどこかに飛ばされたらしいと語った。ただし、どこか知らない世界ではなく、この施設周辺の雑木林とかである。なぜかすみがそのことを知っているのかと言うと、
「殺された彼らは、生きている人達に対し
何か悪さしようとか一切考えてなく、
ただ...」
彼らを施設長室にいるあの霊体の毒牙から守りたかったからだ、と言うのである。そして
「これは、そこに佇む霊体が
教えてくれたんよ。
彼らは決して悪意を持たず、
ただあの男を霊界に送り出せれば、
それで成仏できると言ってたわ」
それを聞いた心霊サークルの学生の中から、び泣く声がちらほらと聞こえてきた。恐らく幽霊、イコール悪い存在と決めつけていたのに、まさか自分達を守るためにそんなことをしていたとは考えもつかなかったのだ。
「何れにしても、うちはこれからそこに行って、
そいつを霊界に送り届けます」
と言ってかすみは勢いよく立ち上がるが、何分暫くの間意識不明であったため、平衡感覚がまだ戻っておらず、少しよろけてしまった。だが、そんな時も何かと喧嘩になる佐伯えりがかすみの腕を抑えて、何とか転倒を防ぐことができた。この時のかすみは、「佐伯って、こんな気配り出来る子なんやな」と佐伯えりを改めて見直したのだった。そんな思いに耽っていたかすみに対し佐伯えりが、
「先輩、確か皆の周りには
結界が張られてましたよね?」
じゃあ、何で先輩は霊に憑りつかれたのですか?と疑問を呈した。かすみは
「あー、ゴメン、うちの周りに
結界張るの忘れてたんよ。ははは」
と笑って誤魔化した。すると
「えー、うそ!! マジ、信じらんない、この人!
ってことは、私の周りは...」
隙だらけだったの!と絶叫してしまった。そしてあろうことか更に
「ちっ、全く...」
と舌打ちし、その後で「使えない先輩だ」と心の中で呟くが、その前半部分はかすみの耳に届いており、
「おい、こら佐伯、折角お前のこと
見直そうとしたが、止めた!!」
と言って佐伯えりに掴まれている腕を離そうといた。だが、今日の佐伯えりは一味違った。かすみの腕を握った手をかすみの脇の下に入れ、思いっきりりだしたのだ。この意表を突かれた佐伯えりの反撃になす統べなく悶え苦しむかすみは、佐伯えりに「ご、ごめんなさい、佐伯さん。もう堪忍してー」と懇願した。この時の佐伯えりは、まさか本当にかすみの弱点が脇の下だったとは考えもしなかったのだが、実は昨晩の懇親会の後で、かすみと一緒に乳首ドリルをしていたに「あれって、逆だったら面白かったんだけどなー」と感想を伝えた。すると、
「僕もそう思ったんですが、
『うちは、脇に毛細血管が一杯
つまっててあかんの』
と拒否されたんですよ」
と聞くに及び、あれっ、物部先輩って脇をられるとやばいのか?と疑問を持ったのだった。そして案の定、まさにその通りのことになった訳だが、その時のかすみは「くそっ、弱点がバレてもうた!」であろうか。なお、かすみは京田に「この部分は使わんといてください」とお願いしたのだが、京田はカメラのフレームを眺めながら、空いた方の手でサムズアップをした。そしてかすみは安心したのだが、実はそのサインは「了解しました」ではなく、「良い画が撮れました」のサインであったことをかすみは誤解していた。そしてこの合宿後数日してから、神室霊華はかすみがどのような除霊を行ったかを早く知りたいため、わざわざ呪いの動画制作委員会に自ら赴き、編集中の映像を特別に見せてもらった。そしてその映像の中のある場面で驚愕の表情を浮かべたため、呪いの動画のスタッフは何か凄い怨霊が実はそこに居たのではないかと緊張したのだった。ところが実際は、佐伯えりがかすみの脇の下を擽る様子を見て驚愕していただけであり、そして遂に神室霊華もかすみの弱点を知ることとなった。その結果、かすみは神室霊華に対する乳首ドリルを行えなくなったのは言うまでもない。なお神室霊華は、かすみの弱点が脇の下であることを玲にも伝えたが、玲は複雑な表情をしていた。と言うのは、
「神室さんなら、単に女性同士の
じゃれ合いで済むけど、僕がやると」
間違いなく、痴漢やー、セクハラやー、と騒ぎたてますね、あいつは、と少し寂しそうな表情でそう語った。そして、
「まあ、あいつが暴走しかけた時の
ストッパーとしてあってもいいかも
ですけどね」
と少し和らいだ表情でそう語ったのだ。
さて話を元に戻すが、その後かすみ達一行は、この施設の責任者が自殺した部屋に向かった。その部屋は2階の職員室前の廊下の奥にあった。そして長年放置されてきたこの施設の状況からして、全く不釣り合いと言うか、ここだけ別次元かと思われるくらい、綺麗な状態で当時のままそこに残されていた。この部屋が面する廊下の壁は落書きが多く目立つことから、恐らく肝試しと言う名の不法侵入者達は、如何にしてこの部屋に入ろうかと画策したことか。だが、結局ここで無くなった霊体達が彼らに降りかかる身の危険を防いでいたことは、恐らく今後も知ることはないだろう。そして部屋の扉からかすみが先ずは恐る恐る中の様子を伺いつつ、部屋に足を踏み入れた。そして丁度部屋の奥、窓ガラスの手前に大ぶりの事務机が添えられており、そこにかすみは、問題の霊体を見たのだった。そして直ちに降霊転移門を机の周りに展開した。
「あそこの椅子に座っているのが、
恐らくここで自殺した施設長です」
とかすみは後から入って来た京田と日比野に向かってそう呟いた。いや、かすみに説明されるまでもなく、そこにいる霊体を彼らも見ていた。そして部屋の外から中の様子をスマホで撮影している心霊サークル部員達も、その霊体が余りにも普通の人にしか見えないことに驚愕していた。そう、今まさにそこで事務処理をしている、そんな風にしか見えないのだった。だが、
「おやー、お客様でしたか。
これは失礼しました」
けけけ、とかすみが何度も聞かされた下卑た笑い声がその男の口から発した。当然、かすみ以外にその男の下卑た笑い声を聞かされた者はここには誰もおらず、まさかあの幽霊が笑ったのかと想像しただけで、呪いの動画のスタッフと心霊サークルの学生たちは、背筋に悪寒が走る恐怖を味わった。そして男は、に立ち上がりこちらに来ようとするが全く動けない。その顔に張り付いた笑みが少しずつだが強張りだし、やがて困惑の表情になり、そして遂には、
「誰だー! 俺様にこんなことをした奴はーー!!」
と鬼の形相とはまさにこれか、と言う凄まじい怒気を含んだ表情で絶叫した。その時、かすみが設置した降霊転移門の外側に、男が殺した者達の霊が、男の最後を見届けに集まって来た。男は、
「お前たちか! 俺をこんな目に合わせてるのは!!」
と叫ぶが、彼らは何も答えず、ただそこで見つめ続けた。そしてかすみは、男のしに動じることなく、まず全員に部屋からの退去を命じた。そして何時もの冷静な佇まいで、
「あんたな、もうええやろ。
さっさとあの世に行きや!」
と決め台詞(仮)を決め込んで、伝家の宝刀である降霊転移門を開けた。男は流石に抗うことが出来ず、ただ「くそ、覚えておけよー!!」と悪人がよく言うセリフを残して霊界に送られていった。序に、その部屋にあった椅子と机も霊界に送らてしまったのだが、
「あっちで、真面目に仕事でもしときや!」
とかすみが言い放ったところで、降霊転移門を解除した。それから、何もなくなった部屋に全員が集まり、かすみの目の前に佇む霊体達に、
「このまま霊界にお見送りしましょうか?」
と尋ねた。全員、頷くのを見て、かすみはその場に降霊召喚門を設置し、お見送りを行った。そして1体ずつ静かにこの世から消えて行ったが、全員、どことなく安心した表情が見て取れて、かすみもこれで彼らも心残りなく成仏できただろうと安堵した。
「さて、これで除霊は全て終わった......! あっ!」
そう言えば、彼らの遺体を探さないと、と言うことを思い出し、かすみはその場の全員に埋められた彼らの遺体を探すことを告げた。勿論警察には、遺体が見つかってから連絡することで、とりあえず外に出ることにした。
一応、かすみの見た映像から建物西側の雑木林の中であることは分かっていたものの、あれから10年以上経つため、下草も十分に伸びて、どこが掘られた場所かを特定するのが困難かと思われた。だが、
「あっ、あそこに一人残ってた!」
となぜかかすみは嬉しそうにその方向に向かって走り出した。そう、穴掘りの際に男によって撲殺された障がい者の青年である。かすみはその青年にお礼を言い、それから降霊召喚門設置してお見送りした。これで彼も成仏できただろう。そして、昨日も使用した園芸用のスコップを手にした呪いの動画のスタッフが、不自然に盛り上がった場所を慎重に掘り進んだ。そして10分程すると、かすみはそこに見えてきた布切れを目にして
「あー、これ、しげる爺さんの着ていた
パジャマの切れ端やね」
と呟いた。そして程なくして、頭蓋骨が現れたことで、京田が直ぐに110番通報を行った。警察が来るまでに時間があるので、その間に全て掘って確認すべきか議論がされたが、かすみが
「こういう場合、下手にうちらが動くと、
彼らを曲げよるから、
気ぃつけなあかんねんよ」
ということで、彼女の意見を尊重して一先ずその場を離れることにした。
やがて遠くからパトカーのサイレン音が聞こえだし、それから程なくして複数のパトカーがこの廃施設に到着した。そして責任者の京田が刑事と鑑識を盛り土のある場所に案内し、序にここら一体の盛り土は全て遺体が埋められていることを伝えた。そんな時、刑事の1人が怪訝な表情で京田を睨んできたので、何か余計な事を言ったのか心配になったが、どうやら「なぜそんなことを知っているんだ?」と問い詰める表情だったのかと後になって思い返した。まあ、確かに現場をちゃんと確認しないと分からない訳で、その点少しフライングだったな、と後で反省したのだった。そしてかすみだが、最早こちらから積極的に何か言う心算は全くなく、聞かれたことだけに答える心算でいた。何れにしても、彼女達に嫌疑がある訳ではなく、何時もの様に型通りの事情聴取を受けてから解放された。
「あっ、そう言えば、
まだお昼食べてないんとちゃいます?」
とかすみは隣にいる京田に声を掛けた。
「そうでしたね、すっかり忘れてました。
何か凄い緊張感が続いたからか、
全くお腹が空く感じが無くて」
と笑いながらかすみにそう語った。そして駐車場にいる全員に対し、「さあ、みんな、お弁当にしましょうか!」と言って、呪いの動画スタッフのワゴン車と学生たちの車のトランクから、旅館が用意した弁当の入った発泡スチロール製のクーラーボックスを取り出して、早速適当に分かれて少し遅めのランチタイムとなった。時刻は午後2時少し前であった。