召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
ロムリア探訪記: 11日目 (前編)
最神玲がロムリアにやって来て11日目を迎えた。この日の前日からロムリアの裏側にある火山地帯の探索をエンペラールとセラスティナと3人で行っていて、つい先ほどロムリアの朝日を拝む時間に戻って来たところである。今の玲には、眠気は全くない。それよりも、アドレナリン全開で強い興奮状態にあると言って良いだろう。と言うのは、昨日の午前中に玲と言うよりもその中身のカーンフェルトの故郷とも言えるケンタリアの存在を確認し、その後はロムリアの裏側に広がる広大な火山地帯において、ロムリアの建国よりもはるか昔に栄えていたと言われる古代の集落や街を発見するという快挙を成し遂げた。確かエンペラールは、帰宅後直ぐに教育文化担当大臣に連絡を入れて、古代遺跡発見を伝えている筈である。そしてセラスティナは、古代遺跡で見つけた道具類に何かしら思い当たることがあるようで、早速独自の調査に入っていた。
そして玲の今日の予定だが、実は特に何も入れてない。と言うのは、場合によっては今日一日もロムリアの裏側の火山地帯をもう少し見て周ることを考えていたのだが、やはり古代遺跡の発見と言うロムリアにとっては慶事とも言える大事件が発生したため、玲が独りで現地に向かうことに何か遠慮してしまうのだ。こういう時は、好きな召喚術の研究か、アーティファクトの作成をすることにしているのだが、残念ながらあの2人がそれをさせてくれないようだ。
「レイ君、起きてる?」
と扉をノックしながらセラスティナが声を掛けてきた。玲は
「かすみじゃありませんから、
どこでも直ぐには寝れませんよ!」
ははは、と笑いながら扉を開けてセラスティナを迎え入れた。
「あら~、そんなこと言って良いの?
大事な人なんでしょ?」
とセラスティナは玲をうが、玲は「いやいや、別にただの同僚ですからね」と照れ笑いをするのだった。全く素直じゃないわよね、この子たちは!と思うセラスティナであった。それよりも玲としては朝食の誘いなのかな?と思ったのだが、それもあるがどうも他にも何かあるような雰囲気をセラスティナから感じた。
ダイニングルームではエンペラールが待ちかねていた。そして玲が挨拶をしてから席に着くなり、エンペラールからこれからこの3人で教育文化担当大臣と面会することを伝えたられた。どうやらエンペラールからの一報がもたらされるや、教育文化担当地区と文化財保護センターは、文字どおり蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。そして直ぐにでも調査隊を派遣すべく、この時間から既に準備が進められているという。そして3人は、先ずは大臣と調査隊の責任者を交えた会議を行い、その後調査隊を案内することになるという。尤も、案内に関しては玲とセラスティナの2人で行くことになる。ただし、
「向こうに行くのは今晩になるから、
それまではゆっくり休んでいて頂戴ね」
である。まあ、今から向かっても、向こうは夜の闇の中だから、何か探そうにも見つかる可能性はない。とりあえず、玲とセラスティナはその件を了解した。そして、実はまだ他に何かあるようで、
「実はね、昨日王宮から連絡が
来ていたんだけどね...」
私もすっかり見そびれちゃってね、と笑いながら話し出すエンペラールだが、その後の言葉に玲は沈黙した。
「3日後の晩に、王宮で晩餐会が催されるのよ。
そこへレイさんを招待したいって」
昨日の時点で3日後だから、明後日の夜と言うことね、とエンペラールは楽しそうに玲を見つめながらそう口にした。「えっ?僕の招待と晩餐会ってどういうことでしょうか?」と玲はエンペラールに尋ねるが、ニコニコしながらも玲の質問には答えない。あっ!何か謎かけでもしているのかな?とった玲は、下を向いて考え出した。そしてその考えがある点に収束した時、玲はこの晩餐会の意味を理解した。だが、
「いやいや、本人の意思を確認せず
勝手に決めるのは良くないでしょう...」
と誰にともなくそう呟くが、エンペラールはそんな玲の呟きに反論した。
「いいえ、レイさん。
王室のことに関しては
国王の決めることは絶対なの。
そこに相手の意思がどうなのか、
と言うことは関係ないのよ」
これがロムリアの流儀なんです、と玲に伝えた。玲は地球にも王室が存在することは知っており、彼が住む日本には地球最古の王室が存在する。恐らく後継者に関しては似たような感じで決めるのだろうなと想像しつつ、ただ、そういった王室の内情を知る訳ではなく、今は慣れてしまった地球人の一般的な考え方で玲は言葉にしたのだが、その考え自体、ロムリアでは通じないという。まあ、自分が騒いだところで何も変えられないことは分かるし、逆に反感を買うことも何となくだが分かる。ただ、
「その説得役が僕になるのは
勘弁してほしいですね」
と玲は明確にその点は拒否した。ただ、エンペラールは、玲に全てを委ねることは考えておらず、王室側もそうすることを考えていないと、そう伝えた。だとすると、どうやって彼女を説得するのか?どうやらエンペラールにはその答えが分かっているようなので、玲はエンペラールからの挑戦と受けて再び考え始めた。だが考えるまでもなく、答えは一つしかないのだが。でも、
「...ま、まさか!?」
と玲はそのまま沈黙した。そして
「ロメロ5世を僕が召喚するんですか?」
そうあって欲しくないと願うが、エンペラールは「ピンポ~ン、レイさん、正解で~す」とその場に相応しくないような陽気な声で正解を伝えた。玲は心の中で「まじかー!!」と叫んでいた。ちなみに、その話し合いは、ヴェラ王女の動画を見せに行った後、ロメロ5世とエンペラールだけで話し合いを持たれたが、その時に出てきたと言う。恐らく国の将来が関係する重大事を訳の分からない奴に任せられない、と言う判断があったと玲は推測するが、実際はヴェラ王女の無事が確認できた時点で、既にロメロ5世は彼女を自分の言葉で説得する、と言う意思が固まったということを、エンペラールから聞かされた。そこまであの国王は、自分の後継者を誰にするか真剣に悩んでいたのだった。そうなると、明後日の晩餐会は......
「多分、いや確実に、
後継者の発表になるわね」
と心なしか沈痛な表情でエンペラールはそう口にした。その場にいないヴェラ王女を後継者にします、と宣言した途端、あの第一王子と第一王女が黙っていないことは火を見るより明らかである。そしてその後に何が生じるかを考えた途端、エンペラールの沈痛な表情が物語ることが起きないとは限らないのだ。だが、玲はそうなる可能性はゼロであると見ており、今もその可能性を否定している。やはり彼女の子供たちの安全を考えると、決して今直ぐにロムリアの地に再び戻ろうとはしないだろう。勿論将来において、子供たちが成人した後であれば、安心して国に帰るという選択肢は考えられる。だが今直ぐではない。もし今直ぐとなると唯一考えられるのは、自分と同様にこの地に召喚されることであるが、そんな状態の国王と言うか女王を果たしてロムリア市民が認めるだろうか?恐らくないと確信できるし、仮にそれでもと良いとロムリア市民が望んでも、あの第一王子と第一王女が絶対黙っていない。そうすると、果たしてこの国の後継者はどうなるのだろうか?と言っても、玲が心配するようなことではない。あくまでも、この国の人々が知恵を出し合って決めることである。玲もあれこれ悩んでも仕方ない、と頭を切り替えて、朝食後に古代遺跡の調査に関する打ち合わせに同行する準備をするのだった。
玲とエンペラール、そしてセラスティナの3人は、教育文化担当大臣の所管する建物にある大臣室にいる。テーブルを挟んだ向かい側には、教育文化担当大臣のヅァイツェフと文化財保護センター長、そして今回の調査団を率いる団長の3人が既に席についていた。そして玲達3人が席に着くや否や、開口一番、ヅァイツェフ大臣が
「エンペラール師、今回の古代遺跡の発見、
ロムリアの一市民として
先ずは感謝の意を伝えたい」
と言って、玲達3人に対し礼を述べた。それから、
「あの地域は唯一の未確認地域であるが、
あの火山と言う奴か、あれが結構厄介で...」
過去に何度か調査隊を派遣したが、歩き難さがって、殆ど調査らしい調査は出来なかったという。しかも、玲が予想した様に、転移門でのサーチをかけても何も見つからなかったようだ。
「そんな場所で一体皆さん方は
どうやって古代遺跡を発見したのか、
非常に興味がありますよ!」
とその場に同席するセンター長と調査団長も頷いて同意した。そこでエンペラールが代表して発見の経緯を伝えた。ただし、照明弾の使用とか乗用ドローンの存在は伏せながら、それらしい方法で発見したことを伝えた。そして、
「実はね、ヅァイツェフ師、
私も火山のことはよく分からないのよ。
ただね...」
ここに同席するレイさんとセラスティナは、地球と言う惑星に住んでいた関係で火山のことを良く知っているのよ、と言うことをまず伝えた。そして
「あの火山、玲さん何でしたっけ?」
と玲を振り向いてそう尋ねるので、玲が「カルデラ火山です」と答えた。そして玲は立ち上がってテーブルの脇にホワイトボードとペンを召喚して、そこに簡単な図を描いて説明した。
「僕らが探索をしたカルデラ火山は、
これ全体が火山の火口だったんです」
とその巨大な火山が何万年前かそれ以前まで活発に活動していたのではないか、ということを解説した。その後内部に空洞が出来て陥没し、中心部よりも周辺部が高くなるカルデラ特有の形が形成され、そしてその頃には恐らく火山活動が休止し、しかもカルデラ内部に大量の水があったりしたら、恐らく古代の人達はそこに移り住んで定住しただろうことは容易に推測されると説明した。勿論そこには明確な証拠はない。ただし、ち間違ってはいないだろうとも思われる。ちなみに、カルデラ内部に移り住んでいたことの証拠は、あそこで見つかった陶器の破片である。ただそうすると、何故そんな所に人が住んでいたのか?と言う疑問が生じて、センター長がそう尋ねた。
「多分、これも推測ですが、例えば...」
1つの仮設として、敵対する国や部族があった時、あのカルデラは防御壁としては有効であることを伝えた。勿論転移が一般的であれば、防御壁の効果は期待できないが、当時まだ転移が無いかまたはごく限られた状況でしか使われてない場合、あの防御壁は有効になるのではないかと説明した。だが、
「決してその火山は活動が停止したのではなく、
もし単に次の爆発の準備をしていただけ
となると...」
恐らく今現在のような状況が発生したことは容易に想像される。そして古代の人達は、急に火山が活動し出したため、急ぎ避難して火山の麓に拠点を移動させた。だが、火山の特性を恐らく十分に把握していなかったのだろう、ある日の爆発で火砕流と呼ばれる高温の火山灰や火山岩石が高速で山頂から麓に流れ下ることが起き、その結果
「僕らが発見した北側の集落の様に
なったと推測されます」
と言う一連のシナリオを玲は披露した。そして、
「多分別の集落か街の人は
南側の洞窟を見つけ、
そこに住むようになったのでは
ないでしょうか」
と私見を述べた。多分あの洞窟であれば、上空から降って来る火山弾や今述べた火砕流を避けることはできる。そして洞窟の最奥部には水がある。そうなると食糧さえ確保されれば、そこで暮らすには十分だと考えても不思議ではない。勿論これは玲の個人的な見解である。だがち間違った見方とも思われないのだった。
その後、エンペラールが北側の集落跡で見つけた石板を目の前のテーブルの上にそっと置いた。それを見たセンター長は目の色を変えた。そして
「エ、エンペラール大臣。
こ、これがそこにあった
物なんですか!?」
と問いかけながら、その石板を手に持って眺め出した。エンペラールは
「はい、これはレイさんが
見つけたのですが、
残念ながら私達の誰も、
その文字が読めません」
多分そちらで解読できると思いまして持参しました、と言うことを伝えた。そして直ちに解読するように伝えますと言って、センター長は早速その石板を持って退席した。それから、調査団長と目的地の場所の確認を行い、今晩玲とセラスティナを伴って現地に向かうことになった。