召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲と物部かすみ、新弟子の歓迎会をする
アメリカ陸軍所属のラハニ・エラン中尉が召喚術師になるために来日した翌日、ラハニは時差ボケの影響が殆どなくぐっすりと眠れたようで、最神玲と物部かすみが起床する午前6時には目を覚ましていた。そして洗面所で洗顔をしていた時、玲が「ラハニさんおはよう」と声を掛けたので、彼女も顔をタオルで拭いた後で挨拶を返した。そんな何気ない何時もの日常が今始まろうとしている。
玲はそのままキッチンに向かい朝食の準備を始めた。かすみはリビングにてスマホで何かを見ている。まあ、かすみの場合は、最新のファッションかお笑いの動画くらいしか興味がないのだが。そしてラハニは、手持無沙汰のため、玲に「ナニカテツダイマショウカ?」と言って、玲の手伝いを始めた。
「ラハニさん、朝食は和食になるけど
良いかな?」
と玲が尋ねると、
「ハイ、ダイジョウブデス。
ワタシ、ワショクダイスキデス」
何か朝からワクワクして楽しみです、と笑顔で答えた。そう言ってもらえると、玲としては作り甲斐があるというものだ。そしてラハニに手伝ってもらいながら3人分の食事の用意が出来た所で、かすみを呼んで全員揃って朝食となった。
「コノオコメトミソシル、
トッテモオイシイデス!」
と早速ラハニが嬉しそうに報告して来た。そして
「アメリカデモ、ワショクダストコロアリマス。
デモ、アサカラタベルトコロ、ナイデス」
しかもこんな美味しい料理は大都会の五つ星ホテルとかじゃないと出ません、と言うことも伝えた。
「うん、気に入ってもらえて、
こちらとしても嬉しい限りですよ」
と玲も満更でもない表情である。そんな感じで朝食が済んだところで、玲が食後のコーヒーを用意した。ただ、
「僕らは普通に和食の後でも
コーヒーを飲むけど、
ラハニさん、何か他の飲み物でも
用意できますよ」
と尋ねたが、「コーヒーダイジョウブデス。アリガトウ」と言ったので、そのままコーヒーを飲んで食後の余韻を楽しんだ。そんな時、玲が、
「ところで、かすみ、今日の夜、
ラハニさんの歓迎会しようかと思うけど」
「ええんとちゃう.........
あっ、そうか!
霊華さんにも伝えとかなあかんねんな!」
と言うことで、かすみはLINEで神室霊華の今晩の都合を確認した。すると直ぐに[大丈夫ですが 何かあったのですか?]との返事が届いたので、かすみは早速電話をすることにした。
[もしもし 霊華さん 今ちょっといい?]
[はい 師匠 大丈夫ですけど
何かあったんでしょうか?]
[実はな...]
と言うことで、新しく召喚術師になった新入りの歓迎会を今晩こちらで行うことを伝えた。すると
[はい 私は予定は何もありませんので
大丈夫ですが 新人ですか...
どこでスカウトされたんですか?]
[あぁ 彼女はねアメリカ人でね
昨日向こうから来てんよ]
まあ詳しいことは今晩来てから話すけど、午後6時になったら迎えに行くわな、と言うことで電話を切った。
「ミナサン、ワタシノタメニ
ナニカシテモラウノハチョット...」
と遠慮しだすラハニだが、玲もかすみも全く気にしておらず、むしろ何時もと違う日常を送ることができるためか、実はかなり楽しみにしているのであった。
さて、8時になったところで3人揃って社務所に向かうが、一応ラハニも神職手伝いと言うことで、神室霊華が使っていた作務衣を着て一緒に手伝ってもらうことにした。と言っても、記帳作業をする訳ではなく、玲と2人でお札やお守り、あるいはを売るだけのことなのだが。
「まあ、僕らは物を売るだけだから、
何も心配することはありませんよ」
と歩きながら玲がラハニに簡単な説明を行った。
「そう言えば、かすみ、神薙の叔父さんには
ラハニが働く事って伝わっているの?」
「あっ、忘れてたわ。今からLINEしとくけど...」
ただ、どういう風に説明したらええのや?と玲に尋ねた。まさか米軍の関係者ですとは言えない訳で、玲とかすみは社務所の準備をしながらあれこれと考えていた。そして玲が、
「あっ、そうだ。東洛総合大学の留学生で
僕らのゼミの後輩が神社に興味があって
来ているとか、そんな理由はどうだい?」
と提案した。かすみは「おー、それええやんか、玲にしては冴えとるんとちゃう?」と玲を小馬鹿にしながらも感心していた。「僕にしては」の部分は余分だろ、とかすみに抗議するが、かすみは玲の抗議を無視して叔父のに早速メールを送った。
さて社務所の受付に落ち着いたところで、最初の参拝客の集団が現れた。そして参拝後に早速社務所にやって来て御朱印帳への記帳のお願いから、や火災除けのお守りの購入が相次いだ。そしてラハニは特に難儀することなく参拝客の要望に応えてお札やお守りの販売を行った。こうして午前中は特に大きなトラブルに見舞われることなく、昼休みとなった時にラハニとかすみが一旦自宅に戻って行った。今日の昼はを予定しており、具材などは既に玲が用意して冷蔵庫に保管してある。そのためかすみは素麺を1~2分程茹でるだけなのだが、流水で冷やした素麺を水と氷を入れておいた透明なガラスの器に盛り、涼しさを演出する。そして冷たくなった素麺をネギなどの具材を入れた麺つゆにつけて食べた途端、ラハニが
「カスミサン!! コレナンデスカ?
ラーメンデハナイデスヨネ?」
と早速かすみに質問して来た。
「うん、ちゃうで。これは素麺と言って
暑い夏にはよく食べるな。
あまり美味しくなかった?」
とかすみが心配そうにそう尋ねた。すると
「イイエ、ゼンゼンチガイマス。
コンナニツメタクオイシイメン
タベルノハジメテデス!!」
と言って、感動しながら綺麗に平らげた。かすみも微笑みながら、「そっか、まあ、気に入ってくれて良かったわ」と言いながら、片づけをしてからラハニと一緒に社務所に戻った。
「玲、ラハニさん、素麺気に入ったらしいで」
「そうか、それは良かった。
じゃあ、僕も食べてくるね」
と言って玲も自宅に戻って行った。
その後何事もなく午後5時の定時を迎えた。玲が「ちょっと歓迎会の準備で買い出しに行ってくるね」とかすみとラハニに断って、玲は先に自宅に戻って行った。今回はケーキを買う必要がないため、地元の差間見町商店街で寿司と総菜、後はツマミになる物を買って、それとアルコールを調達して自宅に戻った。その頃、ラハニの部屋でかすみは、ラハニに霊体を召喚する人形を使った降霊術と除霊を教えていた所だった。そして玲が買ってきた料理をダイニングテーブルに並べていた所で、かすみが部屋から出てきて、
「6時やから、そろそろ
霊華さん迎えに行ってくるわ」
と言ってから転移して行った。暫くしてからラハニも部屋から出てきてダイニングに向かっていた時、かすみが神室霊華を伴ってかすみの部屋に転移して来た。そして2人でダイニングに向かったところで、早速神室霊華とラハニがそれぞれ自己紹介を始めた。ラハニは有名な霊能力者に会えて感動している一方、神室霊華は、何故ラハニと言うアメリカ人の女性が召喚術師になったのか、その理由がわかっていないため、かすみに改めてそのことを尋ねた。そこでかすみは、ラハニとどのような経緯で知り合ったのかについて掻い摘んで説明した。かすみの話を聞いて特に神室霊華が驚いたのは、ラハニが召喚術師になる前に降霊転移門を発見したこと、そして玲とかすみがアメリカ政府からの依頼でその降霊転移門に入って霊界から何かを探していたことである。残念ながら機密事項のため詳細は教えてもらえないが、でもどうやってあの世界から物を探し出せるのか?神室霊華の頭の中には、幾つもの疑問が残ったままである。そこでかすみに尋ねると、「それはね」と言って説明されたのがまさかのビニールであった。
「......それでね、ビニール紐に
引っ掛かった死体を玲が一つずつめて、
それで見つけたということなんよ」
とかすみは簡単に言うのだが、何時間も霊界に留まって平気でいられるのは、恐らくここに居る玲とかすみの2人だけだろうと思うと、やはりこの2人は自分の持つ常識では測り知れない別の世界の人種だと思ったりした。
さて、玲が「じゃあ、始めようか」と声を掛けたので、立ち話をしていたかすみと神室霊華は席に着いた。そしてまず玲が乾杯の挨拶をすることになったのだが、
「今日は、アメリカからやって来た
ラハニさんを召喚術師として迎えました。
これから一カ月程かな、かすみの下で
修業することになります。そして...」
と何やら話が長くなりそうなので、かすみが、「玲、長いって!!」とクレーム入れた。すると、
「あっ、そうか、
挨拶とかすみの愚痴は短い方が良い
というもんね。じゃあカン...」
と言いかけた所で、かすみがマキザッパを召喚して玲をしばいた。そして、
「あんな、玲。そこは、
『挨拶とスカートは短い方が良い、カンパーイ』
がお約束なんやで。しっかり覚えときや!」
とダメだしをいれつつ、もう一発お見舞いした。ちなみに、このフレーズは、かすみの大好きなあるベテラン漫才師の持ちネタである。それをちゃんと表現せず中途半端にした玲に対し、かすみは腹が立ったのだった。それよりも、”玲の奴、あいつうちの愚痴が長いって思てたんやな!”と思うだけで、また腹が立つのだった。
さて2人のミニコントを見ていた神室霊華とラハニだが、神室霊華は また始まったわね”と静観していたのに対し、ラハニは”エッ、エッ! イッタイナニガアッタンデスカ?”とあたふたしていた。そして誰かに聞こうとするも玲とかすみは何やらやり合っているため、結局神室霊華に尋ねたのだが、
「ラハニさん、あの2人は何時ものことなので、
気にしなくても大丈夫ですよ」
と言われてしまった。そして神室霊華は、無表情で「2人とも、そこまでにしまょうか?」と注意した。玲もかすみも、神室霊華が無表情で注意して来た様子を見て”うわ、やばい! やばい!”と動揺したようだ。そして漸く、ラハニの歓迎会が始まったのだった。
さて、その後は歓迎会が和気あいあいの雰囲気の中進行していくが、ラハニはどうしてもかすみに聞きたいことがあるようで、かすみに対し
「カスミサン、カスミサンハ
ドコマデノキョリヲ、テンイデキマスカ?」
と尋ねた。それに対し、
「うーん、うちやったら、
地球の裏側へ往復できるみたいやね」
そう言う意味では、地球上のどこでも行けちゃうということやな、と簡単に答えた。流石に地球上のどこでも転移出来るというのは想像できないようで、ラハニは口をぽかんと開けたままかすみをじっと見つめていた。そんなラハニに追い打ちをかけるように、
「ちなみに、玲は月まで
余裕で往復できるねんで」
なんてったって、召喚エネルギーが琵琶湖やからな、とニヤニヤしながら以前受けたネタを持ち出してそう口にした。流石に玲もかすみの適当な答えに「かすみ、適当なこと言うなよ!」と異議を唱えるが、かすみにはどこ吹く風である。ただ、琵琶湖の例えだけでは分かり難いので、かすみは更に
「例えばな、ラハニさんの召喚エネルギーは、
このコップ位だとすると...」
神室霊華は2リットルのペットボトル位、自分は風呂場の浴槽位だと、何時もの説明を行い、
「ほいで、玲は、琵琶湖なんよ」
日本で一番大きな湖やな、と丁寧に説明した。かすみの相変わらずの無茶なボケに対し、玲は「そんな訳あるか!」と直ぐにツッコミを入れた。かすみは満足そうにするも「まあ、それは冗談で、玲が言うには25mプールらしいんやて」と補足説明をしておいた。そして、
「今のままやったらちょっとした転移は
きついと思うねんけど、
毎日少しずつ召喚術の訓練をすると、
それだけで召喚エネルギー量は
増えるらしいねんよ」
だから毎日の練習が重要となることをかすみは力説した。ただそれだけでは当然増える量が限られるので、かすみは玲にあれを使うのかどうか確認した。玲は「うん、彼女の安全のためには、使った方が良いよね」と言うことで、かすみはラハニに
「ただね、一気にレベルアップできる
裏技があんねんよ。
丁度霊華さんももうじき
レベルアップすんねんな」
とかすみが神室霊華に話を振ると
「はい、来月ですよね!
凄く楽しみにしています!!」
と嬉しそうにそう答えた。ラハニは一体何があるのか分からずキョトンとしていたので、かすみがエンペリアンによる召喚エネルギーの底上げを説明した。すると、
「エー! ソンナホウホウガアルデスカ?
デモ、イチネンマツノハ、ドウシテデスカ?」
と当然の疑問が出てきたので、かすみはレベルアップ量が最大で5割アップとなることや、レベルアップの回数と期間の制限があることをラハニに説明した。
「そやから、丁度来年の今頃に
レベルアップすると、『おー!!』と
ビックリするくらいに召喚エネルギーが
増えるっちゅうことやね」
ラハニは何となく理解したようだ。とりあえず毎日の練習は重要である、と言うことだ。その後もラハニの歓迎会は続き、午後8時になって一旦お開きとなった。