召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
美少女降霊術師の心霊事件簿10: 妖怪との遭遇 (最終幕)
物部かすみとによる世紀の(?)にらめっこ対決から数分後、
「くそー、お前卑怯だぞー!!
それはにらめっこちゃうやんかー!!」
とかすみは頭を摩りながら座敷童子に猛抗議していた。一体かすみに何があったのか?にらめっこと言えば、普通は変顔をするのが定番だが、座敷童子は変顔ではなく変形であった。一体それはどういう事か?それは文字通り顔の形を変えて別の何かに変化することであった。そしてその顔はグロテスクではなく、かすみの笑いのツボを捉えた顔である。一体何の顔になったかと言うと、
「そんな、あ、あ、あの人の顔になったら、
うち、ぜ、ぜ、絶対負けるやんか!!」
とかすみは叫び続けるが、かすみの負ける、と言うか笑いが止まらなくなる顔とは、乳首ドリルでおなじみのおかっぱ頭のあの人の顔である。それがいきなり目の前に現れたため、かすみは防ぎようもなく、そのままゲラゲラと笑ってしまったのだ。完全に迂闊だったが、かすみとしては後の祭りである。その後は座敷童子によるきついシバキが待っており、そのお陰でかすみは頭を摩る羽目になったのだ。だが、なぜ座敷童子はかすみの弱点を見出したのか?本人曰く、「君たちの心の中は何となく分かるんだよね~」と言うことらしい。要するに、心の中を読まれていたのだ。そして、心の中を読んだ結果、神室霊華の前だけに現れた、と言うことであった。それを聞いたかすみは、ぐうの音も出ない。
だがこのまま引き下がってはかすみ様の名折れだ、と言わんばかりに2回戦を申し出るが、それも呆気なく敗れ去った。今度は突然神室霊華の顔になったかと思ったら、その顔からの変顔になったのだ。これには再びかすみは意表を突かれてしまい、しかも神室霊華が絶対しないような変顔だったため、それで笑ってしまった。一方の神室霊華は、顔を赤くして、「座敷童子さん! 私はそんな顔をしませんよ!!」と猛抗議するが、座敷童子からすると、そんなことを全く気にする様子もなく、明後日の方向を向いて彼女の抗議をガン無視した。そして再びかすみにきついシバキを与えたのだ。こうなると、にらめっこはかすみに分が悪いことは明らかである。そこで別の遊びを考える必要があるのだが、かすみは直ぐにあれを思いついた。それは確実に相手をシバクことが出来る方法である。
「お、おい、座敷童子!
次はうちらの子供の頃の遊びで勝負や!」
と言ってかすみはマキザッパとヘルメットを召喚した。そう、「たたいて・かぶって・ジャンケンポン」である。正式名称がこれで正しいかは分からないが、これだとジャンケンで勝った方は相手をマキザッパで殴れる。だが負けた方はヘルメットを被ることで難を逃れる。このギリギリの駆け引きが意外と面白く、かすみは子供の頃に友達とよく遊んでいたのだ。ただし、通常はピコピコハンマーを使うのだが、かすみはどうしても座敷童子を思いっきりシバキたいので、マキザッパを使うことにしたのだ。そして座敷童子は、何やら新しい遊びに目を輝かせており、早速かすみとの勝負に挑んだ。
1時間後、かすみと座敷童子は、疲れ果ててお互いに自分の頭を摩りながら寝そべっている。どうやら死力を尽くした戦いだったようなのだ。一方の神室霊華は、遂にこと切れて眠りについていた。そしてかすみはと言うと、とりあえず初期の目的であった座敷童子をシバクことは出来たが、同時に自分へのダメージも大きかったようだ。だがそれよりも、
「お前、なかなかやるやないか!」
と座敷童子を称えるくらいに、かすみはこの戦いに満足していた。一方の座敷童子は、最初は小馬鹿にしていたかすみだが、ここまで真剣に遊んでくれた人に会ったことは今までないため、かすみのことを見直し始めていた。そしてかすみに対し、「明日も遊べるか?」と尋ねると、かすみは「勿論、何時でも受けて立つ!」と力強く答えた。かすみの返事を聞いた座敷童子はニコニコしながら手を振ってそのまま消えて行った。かすみはその光景を暫し見つめていたが、その後疲れが出たのかそのまま後ろに倒れて寝てしまった。
朝6時にスマホの目覚ましをセットしていたため、かすみと神室霊華は寝不足気味ながら何とか起き上がった。そしてまずは神室霊華が途中で寝てしまったことに対してかすみにお詫びをしつつ、その後どうなったかを尋ねた。すると、
「また今晩、勝負することになったわ」
あいつ、なかなか負けず嫌いなとこあるな、と笑いながらそう答えた。かすみのその言葉に、嫌な感情は一切感じられなかった神室霊華としては、本当に師匠が心の底から楽しんでいたんだ、と言うことを感じ取った。だがそうすると、今晩もまた何やら勝負することになるんだ、となると果たして自分も参加すべきかどうか迷ってしまう。そしてかすみだが、今晩は何をして遊ぶかを真剣に考え始めていた。
そして迎えた翌日の朝、かすみは昨晩の勝負を振り返りながら満足した笑みをえていた。ちなみに、この時間までかすみの目は全開である。夜通し遊ぶことが分かっていたので、前日の午後からしっかりと睡眠をとっていたのが幸いした。そして神室霊華はと言うと、結局師匠であるかすみに付き合うことを決めたのだが、こちらは座敷童子が去った後、遂に疲れ果てて寝てしまった。勿論それまでは、3人で色々な遊びを楽しんだので、神室霊華としては師匠と座敷童子が仲良くなったことに満足していた。
「全くあいつ、
まじ負けず嫌い過ぎるねんなー」
とかすみは独りぼやき出すが、その言葉の中に嫌な感情は一切見られない。むしろ「よー頑張ったんちゃう、あいつ」と褒めてさえいたのだ。一方の座敷童子だが、ここまで真剣に遊びに付き合ってくれた人間を見たことが無く、かすみを遊び相手として尊敬していたのだが、かすみからここの調査が今日までだと告げられた時は、ショックを隠せなかった。だがかすみは、「まあ、時間を見つけてたまには遊びに来るからな」と伝えると、座敷童子は大きく頷いてそのまま消えて行った。
さてかすみとしては、先ずは座敷童子が出るということが分かったので、一度美土路神社に戻ることにした。神室霊華は流石に疲れたということで、そのまま自宅に戻って行った。そして丁度朝食の準備をしていた玲に対し、昨晩のことを語って聞かせた。その前の晩の状況を含めて玲が得た結論は、
「うーん、やはり僕にはわからないな、
その座敷童子の正体が何かということが」
であった。ただし、その正体を知らずにやり過ごすことに凄く抵抗を感じてもいる。玲は当初創成召喚説を疑っていた。だが、自ら実体化させたり消えたりできるという機能は、今の創成召喚ではありえない。勿論、玲の知らない創成召喚、それこそ古代の召喚術が関与していると言うことであれば、有り得なくはないのかもしれない。だが、その可能性は低いだろうと見ている。それよりも建物自体を調べた方が何か分かるかもしれないと思っており、玲も時間があれば、一度現地を徹底的に調査しようと考えている。たが、もし仮にそこで何か得られたとして、ではそれを自分達に還元できるかと言うと、それはなさそうに思ってもいる。それよりも、その時は余計な解釈はせず、ここは妖怪と言う物のの存在を肯定することにするつもりだ。ただ、確かかすみも神室霊華も、座敷童子に出会うと良いことがあると言っていたので、かすみに対し
「かすみ、宝くじとか買ってみたらどう?」
と薦めた。かすみも今回遭遇した座敷童子を見ていると、その逸話に関しては半信半疑の所が出てきたものの、物は試しと言うことでネットでロトくじを購入することにした。すると後日、かすみは呆けたような表情で玲の部屋にやって来て、「玲、ちょっとええか?」と何時もの元気が喪失した状態で、何か重大な心配事が見つかったかのような、普段のかすみからは有り得ない雰囲気を湛えながら、玲に手に持っているスマホの画面を見せた。そして
「玲、この間買ったロトくじがな、
当たってん。しかも1等や」
と平坦な調子で口にしたと思ったら
「6億円やって、マジ信じられへん!」
と急に大声でそう叫んだ。そう、これが座敷童子との真剣遊びの見返りであったようなのだ。玲は目が点になるとはこのことだろうというくらい、かすみのスマホの画面を微動だにせずじっと見続けていたが、直ぐに我に返り、
「か、かすみさん、あなた...」
と言ったっきり、絶句した。まさか本当に座敷童子の見返りがあろとは思っても見なかったのだろう。
一方、神室霊華の方はと言うと、座敷童子との遭遇以降、実は特に何か幸運が舞い込んだなどと言うことはなく、何時もの日常を送っていた。彼女の場合、お金が欲しいとか、高価な宝石が欲しいなどと言う物欲や金銭欲は殆どない。もし何かあるとすれば、玲とかすみを含めた今のこの生活をこれからも大事にして行けたら、と言うささやかな願い位であろう。だが流石に、かすみがロトくじで6億円当てた時は、玲ほどではないが、余りの衝撃で思考が完全に停止するまでに陥っていた。巷で噂されている座敷童子の逸話がまさに本当のことだったんだと思うだけで、余りの凄さからか体が震えだしたりするのだった。そして神室霊華は、かすみに対しそのお金をどうするのか尋ねた。すると、
「せやな、まあ、将来うちの
洋服のブランドでも立ち上げる
ことがあったら、その運転資金かな~」
と普段のかすみには見られない現実的と言うか、ある意味地に足がつくような答えが返って来たことに、神室霊華は正直驚いていた。神室霊華は、
「てっきり、師匠のことですから、
新喜劇に毎日通うとか、
そんなことを考えていたかと
思いましたが」
意外でした、と少し冗談ぽく伝えると、かすみは、
「まあ、それもありやな。
年パスあれば絶対買って
見に行ってるしな。ははは」
と答えながら2人で笑い合っていた。