召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
心霊サークル夏合宿: 樹海探索編 (第2幕)
ジー・プロジェクトのディレクターであり、今回の企画の総責任者でもあるの説明が終わって暫く経つが、誰からも何も声が発せられない。あの物部かすみですら、目を瞑って腕組みをして考えていた。なお、何時でもどこでも直ぐに寝てしまうかすみだが、この時は決して寝ていないことは確かである。そして誰も言葉を発しない時、かすみが目を開けて(決して目覚めた訳ではない)、曽我真をじっと見つめながら真剣な表情で
「ソガシン、その村か、
それを探すという目的は分かった。
けどな、この広い樹海のどこにあるか
分からへんやんか。それどないすんねや?」
と尋ねた。すると、曽我真は
「物部、実はな、その古文書にはな、で黒ずんだ
和紙に描かれた地図みたいなんが挟まっててな。
ただな...」
と答えるも、そのまま語尾が消え去った。そして各自の手にする資料の最後から2ページ目と最後のページに、地図が添付されていることを伝えた。最後のページは現在の地図で、ある場所に大きな〇印が描かれていた。一方そのひとつ前のページには、カメラで撮った和紙に描かれた地図がそのままプリントアウトされているが、そこには何やら記号らしきものが幾つか描かれていた。そして
「最後から2ページ目にあるのが
その地図らしきものや。
どうやら久々羅村を示した地図
らしいねんけど...」
ただし地図としてみるにはかなり難しいという。だが、
「富士山の北側ということと、
その地図の富士山と樹海を示す
記号や文字から判断して、
多分その辺りだろうと見当をつけたんが
最後のページの地図や」
と言うのだ。するとかすみは
「お、お、おい、ソガシン!
その地図、めっちゃ範囲広すぎやんか!!」
もう少し絞り込めよ、とかすみはツッコミと言う名のクレームを入れた。地図の上では大したことないように見えるが、その〇印の隣にある富士山と見比べると、その範囲が広大であることは誰の目にも明らかである。
「でもな、物部、樹海全域からすると、
かなり絞られてるで。
そこんとこ、分かってるか?」
とかすみに喧嘩を売るような気配を湛えた。すると、売られた喧嘩は値切らず即言い値で買い取るをモットーにしているかすみからすると
「そんなん見たらわかるわ、アホシン。
この範囲をこの3日間で調査せぇー、
言うんやろ。お前、まじアホちゃうか?」
「自衛隊の協力でも得な無理やで!」とかすみは指摘するが、かすみの指摘は当然である。しかも一歩進む毎に、どこに向かっているか分からなくなりそうな樹海である。そんな所に心霊サークルの学生達を連れ込んで危険に晒すことはかすみとしては絶対あってはならない。そんなことを指摘すると、曽我真は、
「でもな、物部、俺たちが探すんは宝箱ちゃうで。
大きな村の跡や。それやったらこの範囲でも
十分探せるんちゃうか?」
と反論した。普通の状況であれば不可能ではないが、ここは青木ヶ原樹海である。方位磁石が役に立たないのは有名だが、実は現代版方位磁石でもあるGPSも怪しかったりする。ちなみに、青木ヶ原樹海でもGPSは一応使える。ただし、スマホなどの携帯電話を使ったGPSは基地局が存在しないため論外であるとして、この場合は専用のGPS受信機を使う必要がある。ただ、アメリカ軍が運用するGPS衛生は、民間利用の場合、意図的に誤差が数メートルから場合によっては数十メートルになることがあり、しかも樹海の場合、樹木の密集度が濃いことからGPS電波の乱反射やを起こしやすく、更に複雑な溶岩地形が加わることで更なるGPS電波の乱反射が生じやすい環境となる。そのため、恐らく頻繁に測位不能状態が発生する危険性はあるのだ。ただし、それでもある程度の位置を把握することは不可能ではない。そして、
「勿論、樹海の特殊性は分かってるから、
無理をさせないように細心の注意を
払うことは忘れないけどな」
と言うのだ。
ところで、今までかすみと曽我真のやり取りを黙って見つめていた最神玲は、カフリングを通じてかすみと神室霊華に対し
「僕らの場合、転移門のマーカーを使えば
GPSよりも正確にお互いの位置を把握できるから、
その点は心配しなくても大丈夫だよ」
と説明を行った。玲の説明を聞いた神室霊華は黙って頷いた。そしてかすみも、「せやな、うち等がしっかりフォローすれば大丈夫やな」と落ち着いた声でそう答えた。
さて、今日は本格的な探索をする代わりに、一度樹海内部の探索がどのような感じなのかを全員で体験することになった。その体験を通じて、どれくらいのペースで進めるかを検討するという。そこで早速一行は現地に向かうことにした。ところで事前にジー・プロジェクトのスタッフが下見をした際、目的の場所に近い駐車場は残念ながら存在しないため、国道から逸れた未舗装の脇道を進むことになる。そして直ぐに少しだけ開けた場所があるため、そこに車を停めることになるが、精々乗用車が3、4台停められるスペースしかない。一方、ジー・プロジェクトのスタッフは大型のワンボックス車1台でやって来たのに対し、心霊サークルの部員達は、2台のマイクロバスに分乗して現地入りした。そのため、全員が2台のマイクロバスに乗って向かうことにした。そうと決まると、神室霊華親衛隊は早速神室霊華を拉致して、1台のマイクロバスを占拠してしまった。従って残りのメンバーはもう一台のマイクロバスで必然的に向かうことになった。
目的地に到着すると、直ぐに曽我真から説明が入る。先ずこの場所がベースキャンプになり、2名のジー・プロジェクトのスタッフが常駐することになる。そしてM Mの霊能力者が3名いるので、3つのグループに別れて探索することを提案した。M Mとすると特に異存はないため、それで行うことになった。その後、グループ分けがされるのだが、学生達はやはりどこかに偏ってしまうため、それをどのように決めるかで揉めたりしていた。特に神室霊華の所は、神室霊華親衛隊とリポーターの花巻芽瑠がバディを組むため、どうしても男女の部員同士でいがみ合いが発生する。そこで今日と3日目は同じメンバーで、明日は違うメンバーにしてはどうかと神室霊華は提案し、各自納得して漸くグループ分けが決まった。
そんな喧騒の中、玲は何かを感知したのか、ある方向を向いたままじっと佇んでいた。そんな玲の挙動を不審に思ったかすみは、玲の隣にやって来て何があったのか尋ねた。すると
「何となくだけど、こっちの方向から
何かを感じるんだよね」
「ん?それは幽霊か何かなのか?」
「いや、幽霊じゃないね。
それ以外の何かなんだけど...」
とかすみの問い掛けに答える玲だが、その言葉は尻すぼみになってしまった。と言うのは、どう説明すれば良いのか分からないからだが、そんな2人の元へ何とか仲裁を終えた神室霊華もやって来た。そしてかすみにどうしたのか尋ねると、
「何や、玲がな、こっちの方向に
何か感じる言うねんけど、
霊華さん、何か感じる?」
「うちはなーんも感じんは、ははは」と笑いながらそう尋ねた。神室霊華は首を振りながら「師匠と同じです。私も何も感じません」と答えた。だが玲は、両手を前に出しながら
「この範囲に何かあるのは確かだね。
ただし距離までは全く分からないけど」
と言う。するとかすみが
「ほな、ソガシンの言ってた所に
何かあるっちゅうことやんか?」
と疑わしい目で玲を睨んできた。玲としてはそんなこと言われても仕方ないのだが、そんなM Mの3人が何やら怪しい挙動をしているというので、曽我真と、そしてが3人の元にやって来た。そして曽我真がかすみに何があったのかを尋ねると、
「玲がな、こっちの方に何かあると
感じたらしいねん。
ちなみに、幽霊とかとはちゃうで!」
と答えた。それに対し曽我真は、
「物部はなーんも感じへんのか?」
とかすみに尋ねるが、かすみはソガシンから因縁をつけられたと思い、直ぐに
「はぁ?うちもそれ位感じるわ、ははは」
と強がるも、そんな様子を苦笑しながら眺めていた神室霊華に「師匠、無理しないでください」とめられると、下を向きながら「じょ、冗談に決まってるやろ!!」と捨て台詞を吐いた。それよりも、曽我真とすると、かすみをうことより、あの古文書にある場所付近に何かがあると分かったことで、かなり興奮していた。そして玲のアドバイスの元、探索範囲をかなり限定して進めることにした。
とりあえず初日は、数百メートル程進むことを目標に大体どれくらいの時間がかかるかなどを計測しながら進むことになった。なお、3班のうち、かすみが目的地の真ん中あたりを目指し、玲はそこから東側、神室霊華は西側を進んで行く。そして各班毎にジー・プロジェクトのスタッフが2名付くのだが、玲の所にはリポーターの小菅夢露、神室霊華の所にはもう1人のリポーターの花巻芽瑠が担当する。そしてかすみの所には、
「何でお前がこっち来るねや?」
とかすみがクレーム付ける相手、曽我真が付くことになった。すると、早速曽我真は
「いやー、物部の方にいた方が
絶対オモロイと思ったからな」
という理由であった。これにはかすみは反論できない。やはり「オモロイ」と言う言葉は、彼女にとっては誉め言葉であるからなのだが。そして各班に分かれての探索が始まった。
各般に同行するスタッフの1人がビニール紐を持参しており、それを張り巡らせることで自分達が通って来たルートを目で確認出来るようにした。そして2時間程進んだところで、ベースキャンプから無線で連絡を入れた。ただ残念ながらかすみの班には無線が届かないようで、暫く応答を続けた時、漸く繋がったりした。それ位、樹海の中では無線が繋がり難いのだ。一方のGPSも、やはり受信状況が思わしくないものの、何とか進む方向の検討はつけられるようだ。そしてM Mであるが、実は無線代わりのカフリングによる通信は、問題なく行える。そして彼らの場合、GPSの代わりに転移門によるサーチが可能であり、しかもその場にマーカーを設置することで、お互いの位置関係を正確に把握していた。そして玲が感じている方向をかすみと神室霊華が予測して進路を調整しながら進んで行く。そうやって2時間程進んでから、一旦戻ることにした。
全員が何事もなく無事ベースキャンプに戻って来たのは午後6時、陽が沈むにはもう少し時間がかかりそうな頃である。そして全員が無事に戻ってきたことを確認した曽我真は、予想よりも少し早いペースで進んだことに満足し、一応今日の成果の報告を簡単に行い、直ぐにキャンプ場に戻ることにした。そして戻るや早速全員で夕飯の準備に取り掛かった。今日の夜は、心霊サークル恒例のバーベキューである。食材は、心霊サークルの部員達が来る途中のスーパーなどで仕入れたという。飲み物に関しては、ジー・プロジェクトが用意するということで、かすみが思う昔ながらのバーベキューに近いスタイルになっていた。そして男女問わず、料理好きは早速食材のカットや下ごしらえを始めるが、かすみと神室霊華は食材の下ごしらえを手伝い始めた。かすみと神室霊華はこの間の第一弾の夏合宿でもバーベキューを体験済みであるが、やはりこういうイベントは何度体験しても楽しいものである。そんなことを話しながら、彼女達は作業を進める。一方の玲はと言うと、こちらもバーベキューでは何時ものように炭起こしを担当した。そして午後7時を少し回った頃、西の空では太陽が沈み、空がオレンジから濃い紫へとグラデーションを描いている。目の前の富士山も夜空に溶け込むように黒いシルエットと化したところで、恒例の心霊サークルのバーベキューが始まった。
バーベキューが始まるや、神室霊華の周りには彼女の親衛隊が顔を揃え、更にジー・プロジェクトの2人の女性リポーターも加わってのちょっとした女子会が始まった。かすみはと言うと、先ずは他の新入生の所を周ったり、上級生の所にちょっかいを入れたりして楽しんだ。そして玲は、上級生の男子軍団と静かに肉を焼いて食べるを繰り返していた。そのうち曽我真が玲の隣にやって来て、改めて乾杯をしてから何やら話し始めた。勿論、話しの中心は物部かすみである。
「最神さん、あいつ結構面倒な奴でしょう?」
「中学の時は、ホンマ、お笑いに凝り過ぎるというか、結構シビアな奴でしたよ」と曽我真は玲に昔のかすみの話をした。それに対し玲は、一度ビールでのどを潤してから
「確かに、ことお笑いに関しては、
結構厳しいですね、かすみは」
ははは、と笑いながらそう応じた。そして玲は、かすみから乳首ドリルの犠牲になったことを話すと、曽我真は目を点にしつつ、直ぐに苦笑いして
「全く、物部の奴、
誰彼構わずやりよるなー、ホンマ」
とぼやき出した。玲が「かすみは、昔からそうなんですか?」と尋ねると「ええ、僕もよくあいつのギャグと言うかネタの犠牲になりましたね、ははは」と昔を懐かしんでか、笑いながらそう口にした。そして、金網の上で焼いている牛カルビを箸でひっくり返しながら
「それでも物部はお笑いよりも
今の霊能力者を選ぶみたいですけどね...」
とどこか寂しそうにそう呟いた。実は今日の樹海探索中に、曽我真はかすみにもう一度お笑いを一緒にやらないか聞いたという。すると、かすみは
「有難いねんけどなー、ソガシン。
うちはやっぱ、今の仕事を続けたいねん」
「こっちの方がスリルがあって、めっちゃ楽しいからな!」と答えたのだ。すると玲は、再びビールを一口飲んで
「うーん、そうなると、お笑いに関しては
僕か神室さんにしわ寄せが気そうで
怖いんだよねー」
と愚痴を零した。それを聞いた曽我真は
「えっ、か、神室霊華様まで
あいつの犠牲になってるんですか?」
とビックリして玲に問い掛けるので、玲は「はい、神室さんもしっかり犠牲者の1人になってますね」と答えた。勿論今はその限りではないのだが。そんな感じで玲と曽我真がにこやかに談笑していたとき、物部かすみが2人の挙動を不審に思い
「おい、お前ら!どうせうちのこと、
ってたんやろ!」
と被害妄想気味にそう言って騒ぎ出した。そこで玲が「いやいや、かすみは偉大だなー、という話をしてただけだよ」と言うと、かすみは
「玲、お前絶対それ嘘だろー!!」
と切れだした。すると曽我真が、かすみが誰彼構わずお笑いの犠牲者としていることを指摘すると
「はぁ?うちそんなこと
したことないけどなー」
などとく。そこで玲が自分と神室霊華が犠牲になったことを伝えると、
「それとこれとは別や!」
と騒ぎ出す。全く往生際が悪いというか、素直に認めないかすみである。そんな会話を楽しみながら、心霊サークル恒例のバーベキューの夜は更けていった。