召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
Go to the Space again? (第2幕)
「いや、いや、いや、これって......
一体、何なんだ?」
「まさに塔やね、これマジで!!」
最神玲と物部かすみの2人は、間近に見る光景に思わず見惚れて声を上げてしまう。
「本当にこれって、アメリカ軍が作ったんですか、
ラハニさん?」
「ワカラナイケド、ツクッテイテモ、
フシギジャナイデス」
「そんなラハニさん、本気で仰ってるんですか?」
とRINAとラハニと神室霊華はお互いにアメリカ軍が密かに設置した説を用いてそんな会話をしている。勿論彼女たちも、目の前のそれに目が釘付けである。5人と2匹は今、クレーターなのか竪穴なのかの縁にやって来た。そして目の前にえる黒光りする塔なのか、あるいは巨大な針のような先端が尖ったそれを眺めている。そしてそれは、穴の底から生えているという感じを受ける。その高さは優に100m、いや200mはありそうだ。かすみでいう所の通天閣の2倍だろうか。そして穴の縁から20m程の先端部分が地表に露出しているという状況だ。ちなみに太さはと言うと、穴の大きさから推定すると、最下部で数十mはありそうだ。
「なぁなぁ、とりあえず降りてみぃへん?」
とかすみは興味津々で皆にそう提案する。当然彼らの中で否はない。そこで玲が竪穴の底に転移を試みた。幸い、太陽光がほぼ真上から差し込んでいるため、竪穴の底の様子は十分に確認できる。そして玲は一行を竪穴の底に転移させた。
「これって、底の部分は結構太いなー」
「そうですね。そうなると、
やはり人工物となるのでしょうか?」
と玲と神室霊華は目の前の塔を見てそう呟いた。するとまたしてもあの人、物部かすみは、ニヤニヤしながらその塔らしき物体に近づく。そしてそれに触れたところ、やはりと言うべきか、そこに召喚術式が表示されたのだ。そして直ぐにかすみは玲に「玲、なんか表示された?」と尋ねるので、玲はかすみを手招きする。するとかすみは勢いよく走って来て、塔の方をサッと振り返った。そしてかすみの予想通りそこに術式が表示されたのを確認すると、「よっしゃ、これももらおーっと!」と言いながら早速召喚の書を開いて書き込んだ。そして他の4人も、それが何なのか分からないまま、各自の召喚の書に書き込み始めた。
さて、召喚術式が表示された以上、これは人工物で間違いないのだが、では何なのかと問われると、誰にもわからない。そしてこういう時はまたしてもあの人が動き出した。
「この間もそやったけどな、こういうのは、
この辺を蹴るに限るねん!」
と言いながら、飛び蹴りの要領である場所を蹴った。すると、その様子を目にした玲が慌てて
「ちょっ、ちょっと待て、かすみ、
勝手なことするなって............」
とかすみが暴走しないように注意したが、時すでに遅し。途中から声を詰まらせてしまい、漸く最後に一言「はぁ?」と声を裏返らせながらそう呟いた。それは、またしてもかすみによる奇跡が目の前で起きたからだ。かすみが蹴った場所の近くでぽっかりと穴が開いたのだ。否、形からして入口だろう。そしてそれを目にしたかすみは、目を輝かせていた。早速「また、うちが一番乗りや!」と言いながらその中に入って行った。すると玲は
「ったく、かすみ! 勝手なことするなよな!!」
と注意するも再び時すでに遅し。かすみの姿は既に暗闇の中に消えていた。玲は首を横に振りながら、かすみの後からそこに入った。そして他の3人も、2人の後から恐る恐るそこに足を踏み入れたのだった。
玲は直ぐにかすみの姿を目にした。そして早速かすみに向かって
「かすみ、この間みたいに絶対に何でも
触ったりするなよ。絶対に何も触るなよな!!」
と忠告した。ところが、玲の忠告を耳にしたかすみはと言うと
ん?今玲の奴、絶対触るなよ、触るなよ、
って言ったな。っちゅうことは――
触れよってことか!
と全く正反対のことに解釈してしまった。だがこれは、そもそも玲の表現がかったと言うべきだろう。かすみのような超のつくお笑い好きの場合、強く否定されればそれをフリとして扱うことを玲は失念していたのだ。そのためかすみは、手当たり次第に何かを触り出す。するとそれに反応して部屋の扉が開いたかと思えば、あるいは内部の照明か何かが反応したりする。それを見ていた玲は、その場で頭を抱えてってしまった。そう、うっかり自分の表現が間違って解釈されたことにようやく気付いたのだ。だが三度時すでに遅し。かすみだけでなく、かすみの後から入って来たRINAとラハニも、かすみと同じような行動を始めたため、最早収集がつかなくなってしまった。そしてこの行動の行きつく先はと言うと――
「うわー、また何か動き出したで!」
とニヤニヤしながらかすみがそう指摘するように、何かが反応したのだ。かと言って、この塔みたいな物体がロケットの様に上昇したとか、そういう感じは受けなかったのだが。むしろこの塔の持つ本来の機能が回復したと見るべきだろう。
すると中央にあるエレベーター室のようなところの扉が音もなく開いた。早速かすみはそこに入り込むと、かすみの姿はその場から一瞬で消えた。その様子を見ていた玲は、かすみのことが心配になり「かすみー!」と大声をあげながら、自分もそこに入った。そして残された3人と2匹は、自分たちだけがここにいても事態が好転することは絶対ないことを自覚していた。むしろ、もし万が一、玲がこの世からいなくなったら、その時点で自分たちの運命も尽きてしまう。そう考えた途端、3人とも顔から血の気が一気に引くほどの恐怖を味わった。そして「れ、玲さーん!」とRINAは叫びながら玲とかすみの消えたところに向かった。そしてラハニと神室霊華もその後に続いた。勿論最後に猫2匹も彼らの後を追った。
玲はてっきりかすみがどこかに強制的に転移させられたのかと焦ったのだが、実は単に塔の上階にやって来ただけだった。ただし普段目にするようなエレベーターではなく、転移装置のようなもので送られてきたことからして、やはり地球のテクノロジーではないことだけは確かだと分かった。やがて、玲を追ってRINAとラハニと神室霊華の順番でそこにやって来て、最後に猫2匹も現れた。
さて、彼らが今いる場所はと言うと、どうやらこの塔の制御室みたいなところである。とは言え、何かを制御する装置とかパネルがあるかと言うとそのようなものは存在しないのだが、ただし部屋の中央には、玲とかすみと神室霊華の3人であれば、既に目にしたことのある物が鎮座していた。
「なあ、玲、これって............
あん時のあれやんな?」
「うん、そうだね、あん時のあれだね」
「となると、玲さん、これを作ったのって......」
「そんなん、こいつらやろなー」とかすみは笑いながら自分のヘルメットを指さしてそう答えた。そう、昨年の夏に彼らが遭遇したあのグレイタイプの宇宙人達である。そして彼らが目にしているのは、円筒台の上に表示されている超精密な3次元の銀河系図みたいなものである。一方、その謎のテクノロジーを目にしたラハニとRINAは、凄く精密な銀河系を目にした途端、その美しさに見惚れてしまい、ただ口を開けたまま言葉を失っていた。と言っても、彼らはグレイ仕様のヘルメットを被っているため、その表情は分からないのだが。そんな時、運よくと言うべきか、猫のおもちがケースに入ったままRINAの足元にやって来てRINAを見上げて「にゃー」と鳴き声を上げた。その声を耳にした訳ではないが、RINAが足元に自然と目をやるとおもちが擦り寄っていたので、早速おもちを抱き上げた。そしてこの時になってようやく、RINAは正気に戻ったのだった。
それよりも、これからどうするのか、いや、どうなるのか再び不安に駆られだす玲であるが、ふと何を思ったのか、いきなりヘルメットのシールドを上げた。そして、その場で深呼吸を始めると
「あっ、やっぱり、ここ空気があるぞ!」
と大声で叫んだ。玲はあの時と同じ連中が作った物体であれば、恐らく内部は普通に呼吸できるのではないかと睨んだ。そして一か八かではないが、ある意味賭けに出ることにしたのだ。どのみち、自分の空気ボンベは30分程しか余裕がないため、もしここで呼吸が出来れば、その分節約できるというのだ。そして玲は、その賭けに見事に勝ったのだった。玲の行動とその後の叫び声に反応したかすみと神室霊華は、それぞれヘルメットを脱いだりシールドを上げたりした。そしてラハニとRINAも、それぞれ半信半疑ながら先輩たちがヘルメットを脱いだりしているので、意を決して自分たちもヘルメットを脱ぐことにした。そしてRINAは、ついでにおもちも外に出してあげることにした。するとおもちは大喜びでそこら辺を駆けずり回る。念のため玲がにくたまに対し、勝手に何か触らないように注意を与えておく事は忘れなかった。