召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
なぜ物部かすみは拉致されたのか? (第5幕)
「それで、立花さん、そのご友人の方の死因は
何だったんですか?」
と最神玲は真剣な表情で立花に尋ねた。
「まあ、俗にいうところの心不全というやつですね。
ただ、特に外傷とかはなく、
検死の結果も異状はないということでした」
要するに、薬物や毒物を接種した痕跡はなく、むしろ健康体そのものであったという。それを聞いた玲は、実はあることに思い至っていた。それは――
召喚術師が絡んでいたら、
多分簡単に出来るだろうな
であった。勿論この場にそぐわないし、明らかに不謹慎であるため、心の奥底に留めることにした。それよりもここまでの話であれば、ごく普通に心臓発作か何かが起きて命を落としただけということになるのだが、実はここからがこの問題をややこしくしていたのだ。
が発見された場所、それは米野市の郊外に近いある公園の植え込みの中であった。丁度、朝のジョギングをしていた30代の夫婦が、植え込みの中に周囲とは異なる色の何かを目にしたらしく、ちょっとした興味からそこに足を向けた。するとそこに、1人の男性が俯せの状態で倒れているのを目にしたため、直ぐに119番に連絡を入れたという。ところが、
「その公園というのがですね、
この自宅と職場の中間にある公園ではなくて
ですね――」
自宅からは遠ざかる方向の全く正反対に位置した公園であるというのだ。するとかすみが、
「えっ、ほな、その塚原さんは、
自転車を置いた公園ではなく、
全く逆方向に歩いてった、
ということなんですか?」
と立花に尋ねた。立花は、大きく頷いて
「ええ、物部さんの仰る通り、
状況からして自宅とは正反対の方向に
職場から歩いて向かった、
という感じにしか見えないんですよ。
あるいはですね――」
一度自宅に向かって自転車を走らせたが途中で何があったのか自転車を公園脇の歩道に駐輪し、その後会社の方向に戻ったかと思ったらさらにその先まで歩いて行った...何故彼はそのような意味不明な行動をしたのか、その理由を知りたいがために、立花は個人で玲とかすみに降霊術をお願いしたということであった。その時玲が、ふと何か思いついたのか
「例えば、そのお客さんの所に向かうのを忘れてて
途中で思い出してタクシーに乗って向かったとか、
状況からしてそんなことが考えられますけど......」
と言う考えを披露した。すると
「はい、自分も当初そう考えたのですが、
ただですね――」
塚原理の見つかった公園は、その顧客の事務所とも方向が違うというのだ。
さて玲は話を聞き終えたところで、立花と塚原理香子に対し「お役に立てず、申し訳ありません」と小声でそう謝った。とは言え、これは玲とかすみに非が全くある訳ではなく、その点2人は分かっていたので、
「最神さんのせいじゃありませんから、
気になさらないでください」
と立花は玲を慰めた。玲は立花の心遣いに感謝しつつ、それでも何か気になるのか、ではあるが立花にあることを尋ねた。
「立花さん、その塚原さんと似たような
不可解な行動で亡くなられた方って
他にはいらっしゃらないんですか?」
この玲の問い掛けに対し、立花は一瞬怪訝な表情を浮かべるが、直ぐにハッとした。もしかして同じような不可解な死亡届がされていないとは言い切れない訳で、もし似たような事例が見つかった場合、そこには偶然では片づけられない必然性が必ず存在する。そう考えた途端、立花は居ても立ってもいられなくなるくらいにソワソワし出す。そして
「最神さん、その件ついては
早速こちらでも調査してみます。
何かわかりましたらご連絡します!」
と言いおいて、塚原理香子に断りを入れてから塚原家を後にした。残された玲とかすみも、その場にいて何か役立つわけではないため、塚原理香子に自分たちも他の方法で降霊できないか調べると言って、その場を後にしたのだった。
それから月日が過ぎて10月下旬のある日、丁度物部かすみがラスベガスに向かう2日前、県警の立花刑事が美土路神社にやって来た。彼の顔には、何やら興奮の面持ちが見受けられる。どうやら何かを掴んだようなのだ。そして今回も玲が対応し、かすみは後で玲から話を聞くことにして、早速社務所の集会室にて玲は立花の話を聞くことにした。
10分後、玲は呆気にとられていた。まさか本当に似た事例が存在したとは思っていなかったのだが、それよりも似たような事例が十数件存在したという事実、これは明らかに事故ではなく事件だろうと思うのだが。
「ええ、最神さんの仰るように
本来であれば事件性ありなんです。
ただですね――」
既に検死の結果から全てのケースで事件性なしと判断されていること、そしてやはり事件とするにしても明確な証拠がないため、警察としては本格的な捜査に着手することは出来ないというのだ。そんな話を立花は、たる思いで玲に語った。もう少し早くこの事実を突き止めていたら、と思うと自分の不甲斐なさに腹が立つのだが、今更嘆いても意味がなく、やはり刑事としてはこの件を事件として処理できるように証拠を集めるしかないと覚悟を決めていた。そして玲としては、これが事件性を帯びてきたとなると、そんな立花に対して無償での協力も惜しまないつもりでいるし、恐らく相棒のかすみも同じ思いであろう。そこで念のために、分かっている分に関して降霊術を行ってはどうかと立花に提案した。勿論そこに費用は発生しないことも付け加えてだが。すると立花は安堵の表情を浮かべて
「最神さんの協力を頂けると大変助かります」
とその場で大げさにだが頭を下げてお礼を伝えた。そして早速玲は、日程を調整しつつ、同様のケースで亡くなった人達に対する降霊術を行ったのだが......結果は全ての事例で本人の霊魂が召喚されることはなかったのだった。