召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
撮影所の怪異 (第4幕)
日が沈んで辺りが暗くなり始める頃、M&Mの3人は撮影スタジオに戻って来た。丁度本番が終了したところで、これからしばし休憩に入るという。そして早速3人の所に佐伯えりがやって来て「先輩方、何か見つけましたか?」と尋ねてきたので、かすみは撮影所の奥まった所に祠を見つけたことを伝えた。すると佐伯えりは
「確か古い撮影所とかは、撮影中の事故とかで
亡くなった方を慰霊するための慰霊碑や
墓碑とかがあるのは聞いたことありますが......」
その類の祠ではないかと指摘した。残念ながらかすみにしろ、神室霊華にしろ、そこに何が祀られているのかは分からないため、佐伯えりの指摘に対し否定も肯定もできなかった。それよりも、かすみは佐伯えりに
「この後って、まだ撮影続くねんな?」
と予定を確認すると「はい、まだ続きますね」と答えたので、
「ほな、うちら晩御飯どっか
食べに行くねんけど、ええやろか?」
と確認した。念のため、過去に同様のことが起きたかどうかを古参の警備員に確認したいため、その後もここに留まって様子を見ることを伝えた。佐伯えりは一旦撮影スタッフの所に戻り、主役の雪野愛実と何やら話し込んでいる監物監督にかすみの言葉を伝えた。すると佐伯えりと2人がかすみ達の所にやって来て
「皆さん、よろしければ一緒に晩御飯どうですか?」
と誘った。勿論かすみ達に異論はないため、「ほな、お言葉に甘えさせてもらいます」と言うことで、撮影所から歩いて5分程の所にある洋食屋に向かった。
撮影所前の大通りを道沿いに進むと、その洋食屋 [希望亭] はあった。ただし、その店の看板の文字は長い年月の重みに耐えかねて既に消えてしまっているため、そこが洋食屋だということは外観からは全く分からない。しかも店の前のショーケースに収められている食品サンプルは昭和の時代に作られてから一度も更新されていないためか、精巧さとは程遠い幼稚さと古臭さが漂う始末。そのような雰囲気から、もしかして閉店しているのではないかと錯覚するのだが、引き戸を開けて店内に足を踏み入れると、直ぐに香ばしい焦がし大蒜の香りが鼻を擽る。どうやら注文の入った牛ステーキを焼き上げているところのようだ。そんな店の奥から年配の女性がやって来て「あらー、監督いらっしゃい、好きなところに掛けてちょうだい」と言って再び奥に戻って行った。そこで6人は奥の空いた4人掛けテーブルを2つくっつけて、そこに腰を落ち着けた。
「へぇー、ここって俳優さん御用達なんですか?」
とかすみは監物監督に尋ねるが、希望亭の店内の壁には所狭しとサイン色紙が飾られているからだ。しかもよく見ると、黄色く色褪せた色紙の隣に真新しい色紙が飾られていたりして、何やら雑然と飾られている気がしなくもない。
「はい、ここは昔から映画関係者が
よく利用している店なんですわ」
と監物監督はかすみの問い掛けにそう答えた。すると雪野愛実が
「ここはね、物部さん、ビーフシチューと
メンチカツが有名なんですよ」
「私は何にしようかなー」とニコニコしながらかすみにここのおすすめを伝えつつ、今日は何を食べようか思案し出した。
「うちは、どっちにしようかなー、
霊華さんとラハニさんはもう決めたん?」
「私はビーフシチュー定食にしようかと思います」
「ワタシ、メンチカツタベタコトナイノデ、
ソレタベタイデス」
と言うことで2人は既に決まっていたようだ。後はかすみだが、迷った挙句、単品で両方を注文することにした。そして注文を終えたところで、早速監物監督はM&Mのことをあれこれと尋ね始めた。
「まずですね、うちらは除霊と降霊術を
行いますが、お祓いはしません」
とかすみはそう答えた。だが世間一般の霊能力者のイメージはと言うと、やはりお祓いはマストである。そのため、お祓いをしない霊能力者と言うものがどうしてもイメージできないようで、佐伯えりを除く2人は首を傾げている。そこで、お祓いとは霊が憑りつかないようにする予防措置みたいなものだと指摘しつつ、自分たちは憑りついた霊を確実に取り除くのが専門であることを伝えた。更に
「ただし、結界みたいなのを張って
霊が憑りつくことを防ぐことはしますね」
とも説明するが、その結界を張り忘れたために、霊に憑りつかれて難儀をしたのが今撮影している話であることも付け加えた。
「いやぁ、あん時はマジ油断しててんな―」
と言いながら、その時何があったのかをその場で語った。
「そうだったんですか。私はてっきり
幽体離脱とかされたのかと思いまして――」
映画の中でかすみの役を演じる雪野愛実は、幽体離脱した状態で幽霊たちに導かれて昔の世界を彷徨う設定となっていた。だがかすみとしては、その辺は別にどのように解釈しても問題ないと思っており、
「まあ、映画であれば分かり易く楽しめれば
それでええと思いますけどね」
と伝えておいた。そして丁度その時に、全員が頼んだ料理がテーブルに並べられたため、早速味わうことにした。