悪役令嬢は世界のバグを修正する
講義台の上に置かれた石板。
学生たちは次々と席へ戻り、教室には再び静かな空気が戻っていた。
誰も意味を見つけられない。
ただの奇妙な記号の集合。
そう結論づけるしかなかった。
だが――
レティシアはまだ石板を見ていた。
席に座ったまま、
静かに視線を向ける。
黒い石の表面。
そこに刻まれた無数のルーン。
その瞬間。
わずかな違和感が生まれる。
(これは……)
レティシアの思考がゆっくりと動き始める。
普通の文字ではない。
文字には必ず規則がある。
単語。
文法。
文章の流れ。
だが、このルーンにはそれが見えない。
区切りもない。
繰り返しも少ない。
文章としての構造が存在しない。
(違う)
レティシアの視線が石板の表面をなぞる。
線。
曲線。
直線。
それらが重なり合い、
奇妙な形を作っている。
しかしそれは、
単なる装飾ではない。
よく見ると――
配置に意味がある。
線と線の距離。
角度。
重なり。
位置関係。
すべてが、
何かの規則に従っている。
レティシアの瞳がわずかに細くなる。
(文字じゃない)
これは言語ではない。
文章でもない。
むしろ――
思考の中で一つの言葉が浮かぶ。
構造。
それはまるで、
魔法陣の設計図のようだった。
線の位置。
重なり。
配置。
すべてが一つの仕組みを作っている。
言葉というより、
機構。
レティシアは小さく息を吐く。
(これは……)
言語ではない。
呪文でもない。
石板に刻まれているものは、
まるで――
設計図のようだった。