悪役令嬢は世界のバグを修正する
石板を見つめるレティシアの視線が、わずかに止まった。
線。
曲線。
重なり。
その配置を追っていた思考が、ある瞬間に引っかかる。
既視感。
どこかで見たことがある。
その感覚が胸の奥に広がる。
(これは……)
次の瞬間。
レティシアの記憶が、ふと蘇った。
――舞踏会の夜。
王城の大広間。
貴族たちの視線。
断罪劇。
そして。
あの瞬間。
世界が一瞬止まり、
空間に浮かび上がった
赤い文字。
SYSTEM ERROR
WORLD CODE FAILURE
誰にも見えていないはずの、
奇妙な表示。
さらに現れた言葉。
REWRITE REQUIRED
世界を書き換える必要がある。
あの時は意味が分からなかった。
だが――
今、
石板のルーンを見ていると、
思考の中で何かが繋がっていく。
(コード……?)
レティシアの瞳がわずかに細くなる。
魔法の文字。
古代ルーン。
だがそれは言語ではない。
構造。
配置。
機能。
それはまるで――
命令式。
設計図。
あるいは、
仕組みを動かすための記述。
レティシアの思考がさらに進む。
(世界の……)
視線が石板をなぞる。
ルーンの配置。
線の重なり。
その意味が、
突然理解できる気がした。
(世界のコード……?)
その瞬間。
ルーンの見え方が変わる。
ただの記号だったものが、
意味を持つ構造として浮かび上がる。
線が示す役割。
位置の意味。
組み合わせの機能。
理解が、
一瞬で進んでいく。
レティシアの瞳の奥で、
静かに思考が加速していた。