悪役令嬢は世界のバグを修正する
王立アルカディア学園。
それは単なる教育機関ではない。
王国の未来の貴族たちが集まる場所。
つまり――
小さな貴族社会。
昼休みの校舎内。
廊下の窓際で、数人の学生が小声で話していた。
話題は当然のように、同じ人物へ向かう。
「アルヴェルン公爵家は強い」
男子学生の一人が言う。
王国でも指折りの名門。
軍事力。
政治力。
財力。
すべてを持つ大貴族。
別の学生が頷く。
「敵にしたら終わるな」
単なる誇張ではない。
貴族社会では、
家同士の関係がそのまま人生を左右する。
学園でもそれは変わらない。
誰と仲良くするか。
誰と距離を取るか。
それは小さな政治だった。
別の学生が言う。
「でも王太子とは破局したんだろ?」
舞踏会事件。
王太子による断罪。
そしてその崩壊。
婚約は事実上の破棄状態。
その話はすでに学園中へ広がっている。
学生の一人が腕を組む。
「王太子派は動きづらいな」
貴族社会には派閥がある。
王太子派。
王家を中心とする貴族たち。
そして。
公爵家派。
王国の大貴族を中心とする勢力。
さらに――
どちらにも属さない
中立派。
学園の中でも、その構図は存在していた。
一人の学生が静かに言う。
「でもな」
少し間を置く。
「今のレティシア様は別だ」
昨日の魔法授業。
古代ルーン。
そして舞踏会の件。
能力。
知性。
家柄。
すべてが揃っている。
別の学生が小さく笑う。
「つまり」
「誰も無視できない」
その結論は明確だった。
レティシア・アルヴェルン。
彼女はもう、
ただの学生ではない。
学園という小さな貴族社会で、
その存在は静かに変わり始めていた。
中心人物。
学園の政治は、
今、
彼女を軸に動き始めていた。