悪役令嬢は世界のバグを修正する
中央ホールの奥。
掲示板から少し離れた場所に、
人だかりができていた。
学生たちが自然と道を開ける。
その中心を歩いてくる一人の男子学生。
カイル・ヴァルグレイ。
ヴァルグレイ侯爵家の嫡男。
背が高く、
鍛えられた体つき。
貴族らしい整った顔立ちだが、
どこか武人のような鋭さがある。
腰には装飾の少ない細身の剣。
魔法だけでなく、
剣術も扱う戦闘型の魔法使い。
彼の得意属性は炎。
攻撃魔法に特化した、
実戦向きのスタイル。
学園でもトップクラスの実力者だった。
周囲の学生の一人が声をかける。
「カイル、見たか?」
掲示板の方を指す。
カイルはちらりと視線を向ける。
そして、少しだけ笑った。
「ああ」
短い返事。
特に驚いた様子もない。
まるで分かっていたかのようだった。
別の学生が言う。
「今年も出るんだろ?」
カイルは立ち止まり、
周囲を見回す。
視線には迷いがない。
そして、
はっきりと言った。
「今年は俺が優勝だ」
静かな声だった。
だが自信に満ちている。
迷いも、
冗談もない。
本気の言葉。
一瞬の沈黙のあと、
周囲の学生が苦笑する。
「まあ……」
一人が肩をすくめる。
「そうだろうな」
別の学生も頷く。
「去年準優勝だし」
「今年は本命だろ」
否定する者はいない。
カイルの実力は、
学園の誰もが知っている。
魔法戦闘。
制御。
体術。
すべてが高水準。
大会向きのタイプだった。
カイルはもう一度掲示板を見る。
王立魔法競技大会。
その文字を見つめながら、
小さく呟く。
「今年こそだ」
騎士団推薦。
その先にある未来。
彼の目は真剣だった。
今年の大会。
優勝候補の中心にいるのは、
間違いなく――
カイル・ヴァルグレイだった。