悪役令嬢は世界のバグを修正する
開会の宣言が終わると、
演習場の中央に数人の教師が進み出た。
その中の一人、
魔法学担当の試験官が前に立つ。
手に持った杖を軽く振ると、
競技場の上空に光の文字が浮かび上がった。
大会の進行表。
学生たちがざわめく。
試験官は落ち着いた声で言った。
「これより大会のルールを説明する」
声は魔法で拡張され、
演習場全体に響く。
「本大会は二段階方式で行われる」
空中の表示が切り替わる。
予選
本戦トーナメント
学生たちの視線が集中する。
試験官は続けた。
「まず予選では、各自の魔法能力を総合評価する」
表示に項目が並ぶ。
魔力測定
制御試験
命中試験
魔法安定性
総合スコア
ざわめきが広がる。
「総合か…」
「全部やるのか」
「今年もきついな」
試験官は構わず説明を続ける。
「各試験の結果を数値化し」
「総合スコア上位者のみが」
「本戦トーナメントに進出する」
表示が変わる。
上位者のみ通過
その文字に、
空気が少し重くなる。
つまり、
ここで落ちる者がほとんどということだ。
試験官はゆっくりと言った。
「なお」
一瞬、間を置く。
「本大会は実力主義である」
ざわめきが止まる。
「身分は関係ない」
その言葉が響いた瞬間、
観客席の貴族たちの間に小さな動きが走る。
学生たちの列でも、
微かなざわめきが起きた。
「……まじか」
「完全に点数勝負か」
「公爵でも落ちるってこと?」
試験官は淡々と続ける。
「貴族であろうと」
「平民であろうと」
「評価は同一基準で行う」
「これは王国騎士団および」
「王宮魔法研究所の基準に基づく」
観客席の一角。
黒いローブの観察官たちが無言で頷いている。
その視線は冷静だった。
未来の人材を選ぶ目。
演習場の空気がさらに張り詰める。
列の中で、
カイルが小さく笑った。
「いいじゃないか」
誰にともなく呟く。
「分かりやすい」
実力だけで決まる。
それは彼にとって好都合だった。
その少し後ろ。
レティシアは静かに表示を見ている。
魔力測定。
制御試験。
命中試験。
安定性。
総合スコア。
どこか既視感があった。
胸の奥で、
小さな違和感が広がる。
その瞬間。
視界の端で、
赤い点が点滅した。
ほんの一瞬。
SCORE SYSTEM ACTIVE
すぐ消える。
誰も気づかない。
レティシアだけが目を細める。
(やっぱり……)
心の奥で思う。
(評価イベント……)
まるで。
ゲームのステータス試験のように。
決められた項目。
決められた点数。
決められた通過条件。
レティシアはゆっくりと目を伏せる。
(これも……)
小さく思う。
(実力イベントなのね)