悪役令嬢は世界のバグを修正する
王立アルカディア学園・大演習場。
予選が終わった翌日。
競技場の空気は、昨日とはまったく違っていた。
観客席は満員。
学生だけではない。
教師陣。
貴族関係者。
王国騎士団。
そして、
王宮魔法研究所の観察官たち。
年に一度の本戦。
実力者だけが残る舞台。
中央の巨大な掲示板に、
新しい表示が浮かび上がる。
光の文字。
予選結果
通過者一覧
学生たちが一斉に集まる。
ざわめきが広がる。
「出た!」
「通過者!」
「今年は誰だ!?」
表示が切り替わる。
上位通過者
名前が並ぶ。
16名。
王立学園の精鋭。
学生が読み上げる。
「カイル・ヴァルグレイ」
「リオネル・グランツ」
「エドガー・ラウル」
「ディオン・グレイス」
強い者ばかり。
予想通りの名前。
だが、
一番上にある名前を見て、
空気が止まった。
レティシア・アルヴェルン
総合順位 1位
満点通過
一瞬の沈黙。
次の瞬間、
大きなざわめきが起きる。
「満点って書いてあるぞ!」
「本当に満点なのか!?」
「昨日の記録そのままか!」
「やばすぎるだろ!」
別の学生が言う。
「しかも1位通過…」
「全部最高評価って…」
観客席でもざわめきが広がる。
教師たちも小声で話している。
「前例がない」
「記録更新どころじゃない」
「理論値だ」
掲示がさらに変わる。
トーナメント表表示
光の線が伸びる。
16名の名前が、
対戦順に配置されていく。
本戦トーナメント。
負けたら終わり。
完全実力勝負。
学生たちが興奮する。
「来た…!」
「本戦だ!」
「ここから本番!」
カイルが腕を組んだまま掲示を見る。
自分の位置を確認する。
そして、
一番上の名前を見る。
レティシア・アルヴェルン
カイルが小さく呟く。
「1位通過か…」
悔しさはない。
だが、
確実に意識している。
(あれと当たるかもしれないな)
観客席。
セシリアが静かに座っている。
掲示を見て、
小さく笑った。
隣の令嬢が言う。
「妹さん、本当に1位ですね…」
セシリアは軽く肩をすくめる。
「でしょうね」
楽しそうに続ける。
「あの子、手加減しないから」
演習場の中央。
レティシアは掲示を見ている。
順位。
名前。
線で繋がれたトーナメント表。
どこかで見た形。
どこかで知っている流れ。
胸の奥に、
小さな違和感が広がる。
その瞬間。
視界の端が揺れた。
赤い文字。
ほんの一瞬だけ表示される。
TOURNAMENT EVENT START
MATCH ORDER FIXED
すぐ消える。
誰にも見えない。
レティシアだけが目を細める。
(やっぱり……)
静かに思う。
予選。
順位。
トーナメント。
全部、
順番が決まっている。
まるで。
物語の進行のように。
(イベント……進んでる)
遠くで開始の鐘が鳴る。
本戦開始の合図。
歓声が上がる。
魔法戦闘トーナメント。
だがレティシアだけは、
別のことを考えていた。
(次は……戦闘イベント)