悪役令嬢は世界のバグを修正する
王立アルカディア学園・大演習場。
空は澄み渡り、
観客席は満員だった。
上段から下段まで、
人、人、人。
学生。
教師。
貴族。
騎士団。
王宮魔法研究所。
学園の行事とは思えないほどの人数が集まっている。
ざわめきは止まらない。
「決勝だぞ…」
「満点対騎士家だ」
「絶対やばい試合になる」
「どっち勝つんだよ」
中央フィールド。
巨大な結界柱が四方に立ち、
青白い光がゆっくりと流れている。
結界強度――最大。
安全確認――完了。
審判席に立つ教師が前に出る。
静寂が広がる。
教師の声が、
演習場全体に響いた。
「これより――」
一拍。
空気が張りつめる。
「王立魔法競技大会」
「決勝戦を開始する」
次の瞬間。
歓声が爆発した。
「うおおおおお!!」
「決勝だ!!」
「レオン!!」
「レティシア様!!」
音が震える。
観客席が揺れる。
教師が手を上げる。
「出場者、入場」
フィールド入口の扉が開く。
先に現れたのは、
レオン・クラウディア。
長身。
剣を携えた騎士型の魔法使い。
歩くだけで空気が変わる。
観客席から声が上がる。
「レオン!!」
「騎士家!!」
「行け!!」
騎士団席でも小さな拍手。
一人の騎士が言う。
「あいつは現場向きだ」
別の騎士が頷く。
「勝てば推薦確定だな」
レオンは歓声に反応しない。
ただまっすぐ歩く。
フィールド中央に立つ。
剣を軽く握る。
目は鋭い。
迷いはない。
教師がもう一度言う。
「続いて――」
反対側の扉が開く。
静かに。
ゆっくりと。
レティシア・アルヴェルンが現れる。
歓声が一段大きくなる。
「来た!!」
「満点!!」
「レティシア様!!」
「魔法壊す人!!」
ざわめきが広がる。
研究所席でも視線が集中する。
観察官が言う。
「対象、入場」
別の者が記録板を構える。
「全記録開始」
騎士団席。
隊長格の男が立ち上がる。
それにつられて、
何人かが立つ。
「座って見てられんな」
低い声。
「本物の試合だ」
教師席でも緊張が走る。
アルドリック教授が腕を組む。
「……始まるな」
フィールド中央。
レティシアが歩いてくる。
足音は小さい。
歓声も、
ざわめきも、
遠く聞こえる。
レオンと向かい合う。
距離、十歩。
結界柱が強く光る。
術式展開。
空間が震える。
透明な壁がフィールドを包む。
結界起動。
教師が宣言する。
「結界確認」
「安全域維持」
「戦闘許可」
一瞬の静寂。
空気が止まる。
誰も動かない。
観客も、
教師も、
騎士も、
研究所も。
全員が見ている。
決勝。
最終戦。
教師が手を振り下ろす。
「――開始」
同時に、
結界が強く光った。
その瞬間。
レティシアの視界の端で、
赤い点が瞬いた。
SYSTEM EVENT FINAL
すぐ消える。
心の奥で、
小さな声。
(……イベント)
そして。
(最後)