悪役令嬢は世界のバグを修正する
サロンの中央。
レティシアの前で、
エレノアが止まっている。
距離は一歩。
近すぎず、
遠すぎず。
完璧な位置。
周囲の令嬢たちは、
誰も声を出さなかった。
会話が止まる。
紅茶を持つ手も止まる。
視線だけが集まる。
派閥も関係なく、
全員が見ていた。
王家派も。
騎士派も。
魔法派も。
古貴族派も。
新貴族派も。
中心にいるのは、
エレノアとレティシア。
静かな対面だった。
エレノアが、
ゆっくりと微笑む。
完璧な笑顔。
角度も、
表情も、
声も、
全部整っている。
「初めまして」
柔らかい声。
優雅。
上品。
でも、
どこか冷たい。
レティシアは少しだけ顔を上げる。
「初めまして」
短い。
感情は薄い。
それだけ。
一瞬、
沈黙が落ちた。
周囲の令嬢たちが、
息を止める。
エレノアはレティシアを見ている。
まっすぐ。
観察する目。
測る目。
評価する目。
そして、
ほんの少しだけ首を傾けた。
笑顔のまま、
静かに言う。
「……変な人ね」
空気が凍った。
本当に、
音が消えたみたいに。
誰かが扇子を落としそうになる。
騎士派の令嬢が目を見開く。
魔法派が息を止める。
古貴族派が顔を伏せる。
新貴族派が固まる。
セシリアの眉がわずかに動く。
だが何も言わない。
レティシアは少しだけ瞬きをした。
それから、
普通に聞き返す。
「そう?」
間。
さらに空気が重くなる。
エレノアの笑顔が、
ほんの少しだけ深くなる。
「ええ」
優雅なまま。
でも刃みたいな声。
「噂通りだと思ったの」
一拍。
「もっと怖い方かと思っていたけれど」
少し間を置く。
「ただ、変わっているだけなのね」
周囲の空気が、
じわじわと冷える。
笑顔の会話なのに、
完全に戦いだった。
レティシアは少し考える。
本当に少しだけ。
そして言う。
「よく言われる」
それだけ。
言い返さない。
怒らない。
気にしない。
それが逆に刺さる。
周囲の令嬢たちの表情が変わる。
ざわつきが広がる。
小声。
「今の…」
「完全に…」
「ぶつかった…」
「王家派に…」
「終わった…」
空気がはっきり悪くなる。
派閥の線が、
見えるみたいだった。
その瞬間。
レティシアの視界が赤く揺れる。
SYSTEM
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TARGET CONFIRMED
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ELIMINATION EVENT READY
一瞬で消える。
レティシアの瞳がわずかに揺れる。
心の中で呟く。
(……来た)
少し間。
(排除イベント)