悪役令嬢は世界のバグを修正する
レティシアの部屋。
机の上の空間に、
まだルーンが浮かんでいる。
夜会の配置図。
席順。
評価。
そのすべてが、
ゆっくり回転していた。
レティシアは動かない。
椅子に座ったまま、
その光を見ている。
小さく息を吐く。
「……違う」
配置だけじゃない。
もっと細かいものがある。
彼女は目を閉じる。
思い出す。
夜会の前。
サロン。
令嬢たちの会話。
質問。
笑顔。
沈黙。
その瞬間。
ルーンの上に、
別の線が浮かぶ。
細い光。
人と人をつなぐ線。
順番に点灯する。
一人目。
質問。
二人目。
追質問。
三人目。
評価。
四人目。
婚約の話題。
五人目。
派閥の話題。
順番に光る。
レティシアの瞳が開く。
「……順番」
線がさらに増える。
話題ごとに色が違う。
青い線。
雑談。
緑の線。
家の話。
金の線。
婚約。
赤い線。
政治。
黒い線。
評価低下。
全部、
決まった順番で流れている。
ルーンの上に文字が出る。
FLOW ORDER
TOPIC ROUTE
SOCIAL CHECK
会話の順番が再生される。
最初は軽い話題。
季節。
舞踏。
領地。
次に家格。
次に派閥。
次に婚約。
最後に政治。
そして評価。
数値が上下する。
SOCIAL VALUE ↑
SOCIAL VALUE ↓
MARRIAGE VALUE ↑
MARRIAGE VALUE ↓
FACTION VALUE ↑
FACTION VALUE 0
レティシアの位置が光る。
LETICIA
会話が再生される。
「婚約はお考えですか?」
↓
短い返事
↓
評価↓
「どの派閥に?」
↓
曖昧
↓
評価↓
「王家については?」
↓
無回答
↓
評価↓↓
数値が落ちていく。
ルーンが回る。
評価の変化が、
線として表示される。
会話 → 評価↑↓
派閥 → 評価↑↓
婚約候補 → 評価↑↓
全部つながっている。
レティシアが小さく言う。
「……連動」
さらに上に文字が出る。
SYSTEM
FLOW ANALYSIS
次の行。
CONVERSATION ROUTE
EVALUATION LINK
CHOICE ORDER
レティシアの目がわずかに細くなる。
もう一度再生する。
同じ順番。
同じ質問。
同じ評価。
一つも変わらない。
別の角度から見る。
やっぱり同じ。
少しだけ息を吐く。
「固定」
間を置いて、
もう一度。
「順番がある」
ルーンの中に、
細い枠が見える。
枠の中に会話が入る。
順番に処理される。
まるで、
入力欄。
イベント欄。
選択欄。
レティシアが小さくつぶやく。
「……決まってる」
さらに静かに。
「最初から」
ルーンがゆっくり回る。
FLOW ANALYSIS COMPLETE
文字が表示される。
その下に、
新しい行。
NEXT ANALYSIS AVAILABLE
レティシアは目を離さない。
次を見る準備をしていた。