悪役令嬢は世界のバグを修正する
第4巻 第1章 魔法大会告知
シーン7 レティシア視界変化
学園・魔法訓練場。
屋外に作られた巨大な訓練区域。
地面一面に描かれた魔法陣。
円が幾重にも重なり、
線が交差し、
中心には制御紋章が刻まれている。
大会前の準備で、
多くの生徒が練習に集まっていた。
詠唱の声。
魔力の光。
小さな爆発音。
風が揺れる。
炎が走る。
いつもの光景。
普通なら。
男子生徒が詠唱する。
「火よ、形を成せ」
魔法陣が光る。
炎が生まれる。
別の場所では、
令嬢が制御練習をしている。
「収束…維持…」
光の球が空中に浮かぶ。
教師が指示を出す。
「魔力を乱すな」
「順序を守れ」
「式を崩すな」
誰にとっても、
ただの魔法訓練だった。
レティシア以外には。
彼女は訓練場の端に立っていた。
何もしていない。
ただ見ている。
地面の魔法陣を見る。
その瞬間、
視界が少し揺れる。
線が増える。
円が分かれる。
重なっていた模様が、
分解される。
ただの魔法陣じゃない。
構造。
配置。
順番。
式。
流れ。
全部見える。
魔法陣の上に、
さらに線が浮かぶ。
見えないはずの補助線。
計算式のような文字。
位置を示す点。
角度。
接続。
魔力の通る順番。
誰かが詠唱する。
その声に合わせて、
線が動く。
順番通りに光る。
間違えると、
流れが乱れる。
全部分かる。
全部見える。
その瞬間、
視界の中央に文字が出る。
SYSTEM
MAGIC STRUCTURE VIEW
少し遅れて、
追加表示。
ENABLE
レティシアの目がわずかに細くなる。
魔法陣を見る。
円が回って見える。
線が組み替わる。
式が並び替わる。
詠唱と同時に、
コードが流れるみたいに見える。
彼女の頭の中に言葉が浮かぶ。
(式…)
生徒が魔法を発動する。
光が走る。
その裏に、
順番が見える。
(順番…)
別の生徒が失敗する。
式が崩れる。
流れが止まる。
どこが違うか分かる。
(コード…)
教師が怒る。
「順序を守れ!」
「構造を崩すな!」
その言葉に、
レティシアの視界が強く揺れる。
構造。
順序。
式。
全部、
同じ。
社交の時と同じ。
夜会の時と同じ。
配置。
条件。
流れ。
結果。
全部決まっている。
視界に表示が増える。
FLOW
ORDER
STRUCTURE
さらに。
SCRIPT
一瞬だけ、
文字が重なる。
MAGIC SCRIPT
ACTIVE
レティシアの呼吸が少しだけ止まる。
訓練場を見る。
生徒の位置。
魔法陣の位置。
教師の位置。
全部が配置になる。
全部がノードになる。
全部が線で繋がる。
頭の中で、
自然に言葉が出る。
(魔法…)
少し間。
(プログラム…)
その瞬間、
表示が一瞬だけ点滅する。
CODE
READ
すぐ消える。
誰も気付かない。
詠唱の声だけが続く。
レティシアは動かない。
ただ、
地面の魔法陣を見続けていた。
それはもう、
ただの魔法陣には見えなかった。
動いている構造だった。
書かれた式だった。
実行されている命令だった。