悪役令嬢は世界のバグを修正する
闘技場中央。
巨大魔法陣の外周に、参加者たちが集められていた。
一年生から最上級生まで、全学年。
さらに今年は、
他国からの留学生も加わっている。
整列した人数は、例年より明らかに多かった。
教師が前に立つ。
「これより、年に一度の魔法大会を開始する」
声が結界に反響し、闘技場全体に響く。
観客席がざわめく。
貴族席。
王族席。
観測席。
騎士団席。
すべてが埋まっている。
周囲で小声が飛び交う。
「今年多すぎないか?」
「魔導院が観測席出してる」
「王族来てるぞ」
「帝国の留学生もいるらしい」
別の生徒。
「優勝したら人生変わるぞ」
「騎士団推薦出る」
「魔導院推薦も出る」
「王家に呼ばれるかもしれない」
さらに別の声。
「今年は帝国が来てる」
空気が変わる。
ざわめきが一段低くなる。
「帝国って…あの魔導帝国?」
「天才がいるって噂」
「古代魔法使えるとか」
「嘘だろ」
教師が続ける。
「今年の大会は特別である」
その一言で、
闘技場が静まる。
「魔導帝国より留学生が参加する」
どよめき。
貴族席もざわつく。
観測席でも動きがある。
騎士団が視線を動かす。
見えないところで、
何かが動いた。
その瞬間。
レティシアの視界に、
文字が浮かぶ。
EVENT FLAG
MAGIC TOURNAMENT
さらに。
FLOW
START
STRUCTURE
ACTIVE
彼女は目を細める。
周囲を見る。
生徒。
教師。
留学生。
貴族。
王族。
研究所。
騎士団。
全員が、
決められた位置にいる。
誰もずれていない。
誰も余っていない。
配置が完成している。
魔法陣を見る。
線がつながる。
配置が閉じる。
流れが回る。
表示がもう一つ出る。
EVENT
READY
彼女の心の中で言葉が浮かぶ。
(……イベント)
少し間。
(始まるんじゃない)
視線をゆっくり動かす。
闘技場。
結界。
観測席。
王族席。
騎士団。
全部つながっている。
(起動してる)
表示が一瞬だけ揺れる。
MAGIC TOURNAMENT
ACTIVE
UNKNOWN PATH
HIDDEN
すぐ消える。
レティシアは小さく息を吐く。
(やっぱり)
少しだけ口が動く。
「イベントだ」
誰にも聞こえない声。
だが。
闘技場の魔法陣が、
わずかに光を強めた。