悪役令嬢は世界のバグを修正する
レティシアは、
ゆっくりと空を見上げた。
巨大なルーン。
停止したままの構造。
だが――
完全ではない。
視線をわずかに動かす。
一部だけ、
違う。
線が途切れている。
接続が、
噛み合っていない。
順序が、
途中で切れている。
(……おかしい)
世界は、
修正中だったはずだ。
歪みを戻し、
流れを整え、
本来の形に再構築する。
その処理が――
止まっている。
途中で。
彼女の視界に、
表示が浮かぶ。
STRUCTURE ERROR
INCOMPLETE
短い。
だが、
意味は明確だった。
未完。
修正は終わっていない。
構造は、
完成していない。
レティシアは、
地面の魔法陣を見る。
そこでも同じ。
接続が一つ、
切れている。
本来なら繋がるはずの流れが、
途絶えたまま固定されている。
(……これ)
思考が、
迷わない。
原因ではない。
結果でもない。
ただの“欠損”。
一箇所だけ。
ほんのわずか。
だが、
そこが繋がらなければ、
全体が動かない。
(直せる)
自然に、
そう思った。
考えたわけではない。
選んだわけでもない。
見えたから、
分かる。
どこを、
どうすればいいか。
順序。
接続。
位置。
すべてが、
最短で示されている。
彼女の指先が、
わずかに動く。
触れる距離ではない。
だが――
距離は意味を持たない。
ルーンは、
そこに“ある”のではなく、
“存在している”。
ならば。
(ここ)
彼女は初めて、
自分から、
その構造へと意識を向ける。
今までは、
見ていただけだった。
なぞっていただけだった。
だが今は違う。
“触れる”という選択。
それを、
自分で選んだ。
ほんのわずか、
指先が止まる。
迷いではない。
確認。
そして――
そのまま、
接続の切れた一点へと、
意識を重ねる。
世界の構造に、
初めて“干渉”するために。