悪役令嬢は世界のバグを修正する
――同時に。
離れた場所で、
それぞれの“答え”が出ていた。
■研究所
観測室。
凍りついたような静寂の中、
ただ一つ、
表示だけが更新される。
ANCIENT USER
CONFIRMED
ログが走る。
過去の記録。
異常値。
接続履歴。
すべてが、
一つの結論へ収束していく。
研究員の一人が、
震える声で呟く。
「……一致、しています」
別の画面。
アクセス権異常。
未知ユーザー。
古代層反応。
すべてが繋がる。
主任は、
静かに画面を見つめたまま、
わずかに目を細める。
そして。
「……確定」
短く、
それだけを言った。
仮説は終わった。
観測も終わった。
残ったのは、
事実だけ。
彼女は“鍵”ではない。
“使用者”だ。
■騎士団
闘技場外縁。
強制的に行動を許可された騎士たち。
その中で、
副官が空を見上げる。
表示。
ANCIENT USER
CONFIRMED
一瞬の沈黙。
そして、
即座に判断が下る。
「……対象変更」
声に迷いはない。
「排除任務、停止」
「捕獲、もしくは制御へ移行」
周囲の騎士たちが、
わずかに緊張を強める。
相手は敵ではない。
だが、
味方でもない。
制御不能。
それでも――
管理しなければならない対象。
副官は低く続ける。
「……最優先で確保する」
それは命令ではない。
方針の確定だった。
■闘技場
停止した世界の中心。
カイル。
完全には動けない。
だが、
意識だけが、
わずかに追いついている。
視界の中。
レティシアだけが、
動いている。
その異常。
その確定。
空に浮かぶ表示。
ANCIENT USER
CONFIRMED
カイルは、
ほんのわずかに笑った。
「……やっぱりな」
確信していたわけではない。
だが、
予想はしていた。
あの違和感。
あの動き。
あの“ズレ”。
普通ではない。
同じではない。
そして今、
それが証明された。
彼は目を細める。
(そっち側か)
世界の内側ではない。
触れる側。
干渉する側。
その入口に、
彼女は立っている。
そして――
自分もまた、
わずかにそこへ近づいていることを、
理解していた。