悪役令嬢は世界のバグを修正する
静止した世界。
崩れかけた構造。
上位制御の不全。
すべてが、
まだ“途中”のまま止まっている。
レティシアは、
空を見上げたまま動かない。
巨大ルーン。
その奥。
さらに深い層。
何かが、
変わり始めている。
今までと違う。
修正でもない。
補正でもない。
流れそのものが、
分岐している。
既に決まっていたはずの順序。
定義されていたはずの結果。
そのどちらにも、
続いていない。
(……違う)
“用意されていない”。
その感覚だけが、
はっきりと残る。
次の瞬間。
空のルーンの一部が、
静かに書き換わる。
今まで存在しなかった記号。
未定義の構造。
それが、
一つだけ浮かび上がる。
表示。
UNKNOWN PATH
ACTIVE
誰の命令でもない。
誰の制御でもない。
自然発生でもない。
“生成された”。
既存の流れの外で。
(……新しい)
レティシアは、
その意味を完全には理解しない。
だが、
感覚だけは掴んでいる。
これは、
用意された未来ではない。
決められた結果でもない。
“選ばれていない道”。
そして今。
それが、
実行状態に入った。
ACTIVE。
その意味は単純だった。
もう、
元には戻らない。
世界はすでに、
既存の構造を外れている。
管理できない領域へと、
踏み込んだ。
静止したままの世界の中で、
ただ一つだけ。
その表示だけが、
確かに“進んでいた”。