悪役令嬢は世界のバグを修正する
学園・正門前。
遠征隊は、
すでに整列していた。
生徒たち。
教師。
その後方に、
騎士団。
さらに、
魔導院の観測班。
隊列は整っている。
規律も保たれている。
だが、
その構成は明らかに異常だった。
ただの実習にしては、
重すぎる。
ただの調査にしては、
揃いすぎている。
生徒の一人が小さく呟く。
「……これ、本当に実習か?」
誰も答えない。
だが、
同じ違和感は、
確実に広がっていた。
騎士団の列。
完全武装。
視線は周囲ではなく、
内部へ向いている。
副官が低く命じる。
「全隊、監視維持」
即座に応答。
「了解」
視線が揃う。
対象は一つ。
レティシア。
魔導院側。
観測装置が展開される。
小型の水晶。
同期式の魔法陣。
淡い光が重なる。
「観測式、同期完了」
術者たちが静かに頷く。
外部からの観測。
内部の変化。
すべてを捉える準備が整っている。
そして――
遠く離れた場所。
魔法研究所。
観測室。
表示が静かに点灯する。
TARGET
LETICIA
TRACKING
ACTIVE
流れが繋がる。
学園。
騎士団。
魔導院。
研究所。
すべてが一つの対象に収束する。
レティシアは、
その中心に立っている。
何も言わず。
何も変わらず。
だが、
全ての視線を受けながら。
(……始まる)
小さく思う。
遠征。
調査。
実習。
そのどれもが、
表の名前に過ぎない。
実際には。
これは、
準備された場。
条件を揃え、
反応を引き出すための場所。
つまり――
実験場。
誰も口には出さない。
だが、
すでに全員がその中にいる。
遠征は、
まだ始まっていない。
それでも、
すでに――
“実験”は始まっていた。