悪役令嬢は世界のバグを修正する
守護者の動きが、
再び加速する。
騎士たちの攻撃に応じて、
正確に、
容赦なく。
だが、
レティシアは動かない。
剣も抜かない。
魔法も組まない。
ただ、
見ている。
流れ。
分岐。
順序。
そのすべてが、
一つの線に収束している。
(……これ)
正解は、
戦うことではない。
攻撃すれば、
強化される。
防御すれば、
一時停止。
だがそれも、
完全ではない。
一つだけある。
途切れない流れ。
すべての分岐を抜け、
最短で、
終点へと繋がる線。
レティシアは、
その線に足を乗せる。
一歩。
守護者の腕が振られる。
だが、
彼女は動かない。
回避。
ほんのわずか、
最小限の動き。
当たらない。
次の瞬間。
さらに一歩。
今度は、
完全に停止する。
タイミング。
守護者の動きと、
ぴたりと重なる。
攻撃は来ない。
反応がない。
そのまま、
次の動きへ。
回避。
停止。
回避。
すべてが、
決められた順序で繋がる。
無駄がない。
余計な動きがない。
ただ、
“正しく動く”。
守護者の動きが、
変わる。
速度が落ちる。
反応が遅れる。
騎士の一人が気づく。
「……遅くなってる?」
さらに一歩。
レティシアが、
指定された位置で止まる。
完全に。
その瞬間。
守護者の動きが、
止まる。
完全停止ではない。
だが、
明らかに鈍っている。
レティシアの視界に、
表示が浮かぶ。
SEQUENCE MATCH
一致。
彼女は理解する。
これは勝利ではない。
撃破でもない。
(合ってる……)
構造に。
順序に。
“合っている”。
だから止まる。
だから変わる。
守護者は、
倒されたわけではない。
“認め始めている”。