悪役令嬢は世界のバグを修正する
「押し切れ!」
騎士の声が響く。
剣が振られる。
魔法が放たれる。
変わらない。
守護者は、
崩れ、
戻り、
応じる。
攻撃は通っている。
だが、
意味がない。
むしろ。
繰り返すほどに、
反応が鋭くなる。
「なんでだ……!」
誰かが叫ぶ。
正しいはずの行動。
戦うこと。
倒すこと。
それが、
ここでは通用しない。
レティシアは、
その中に立っている。
同じ空間。
同じ距離。
だが、
やっていることはまったく違う。
彼女は攻撃しない。
剣も振らない。
魔法も使わない。
ただ、
動く。
回避。
停止。
回避。
決められた順序で。
守護者の反応が、
明らかに変わる。
遅れる。
鈍る。
止まる。
「……なんであいつだけ」
誰かが呟く。
理解できない。
同じ場にいるのに、
結果が違う。
レティシアの中では、
答えは明確だった。
(違う)
これは戦いじゃない。
行動は攻撃じゃない。
“入力”。
一つ一つの動きが、
意味を持っている。
順序。
タイミング。
位置。
それが揃ったときだけ、
結果が変わる。
(順序……)
それが鍵。
間違えば、
弾かれる。
正しければ、
通る。
ただそれだけ。
騎士たちは、
戦っている。
だが、
レティシアは違う。
操作している。
この空間そのものを。
守護者は敵ではない。
“応答”だ。
だから、
攻撃は通じない。
必要なのは、
力ではない。
“合致”。
それに気づいたのは、
彼女だけだった。