悪役令嬢は世界のバグを修正する
守護者が停止した直後。
空間が、
ゆっくりと動き出す。
戦闘の余韻ではない。
別の処理が、
始まっている。
床。
広がっていた回路が、
静かに変形する。
線がほどけ、
再び繋がり直す。
すべてが、
中心へと収束していく。
流れが集まる。
一本の軸に、
まとめられていく。
壁。
重なっていたルーンが、
回転を止める。
ばらばらだった層が、
整列する。
順序通りに。
正確に。
空間全体が、
一つの構造へと組み直されていく。
中心。
それまで曖昧だった“核”が、
明確になる。
覆っていた構造が解け、
その姿が露出する。
浮かび上がる。
多面体。
完全な立方ではない。
だが、
極めて近い形。
内部に、
光が流れている。
揺らぎではない。
規則。
順序。
意味を持った流れ。
コード。
それが、
中で動いている。
誰も近づけない。
ただ、
そこに現れたものを見ている。
レティシアだけが、
理解している。
これは、
出現ではない。
解放だ。
封じられていたものが、
開かれた。
視界に、
表示が浮かぶ。
USER VERIFIED
ACCESS GRANTED
確認。
許可。
それは報酬ではない。
褒美でもない。
“アクセス権”。
ここに来て、
正しく動いた存在に対する、
正式な応答。
レティシアは、
その意味を受け取る。
選ばれたのではない。
通ったのだ。
条件を満たし、
順序を合わせ、
応答を一致させた。
その結果として、
開かれた。
中央に浮かぶそれは、
宝ではない。
“鍵”でもない。
すでに開いている。
必要なのは――
“使うこと”だけだった。