悪役令嬢は世界のバグを修正する
守護者が停止した空間で、
中央の“核”が変化する。
床の回路が、
静かに収束していく。
流れが一点に集まり、
形を作る。
それは、
結晶だった。
立方体に近い形。
わずかに歪みを含んだ、
多面体。
空中に浮かび、
ゆっくりと回転している。
内部に、
光がある。
揺らぎながら、
流れている。
生徒の一人が、
思わず呟く。
「……宝石?」
誰も否定できない。
触れられそうだ。
取れそうだ。
だが、
レティシアには違って見える。
その内部。
光ではない。
“流れ”。
“構造”。
ルーンが、
圧縮されている。
単なる文字ではない。
意味を持った塊。
構文。
命令。
それらが、
極限まで凝縮されている。
(……違う)
物じゃない。
(これ……)
見えているのは、
形ではない。
“内容”。
結晶は容器に過ぎない。
その中にあるもの。
それこそが本体。
圧縮された情報。
まとまった構造。
そして。
(……権限)
その言葉が、
自然と浮かぶ。
何かを動かすための、
許可。
処理に割り込むための、
鍵。
断片。
完全ではない。
だが、
確実に機能する一部。
レティシアは、
それを見つめる。
これは宝ではない。
報酬でもない。
“権限”。
世界に対する、
操作の一部。
秘宝の正体は、
ただ一つ。
Permission Fragment――
“権限の断片”だった。