悪役令嬢は世界のバグを修正する
廊下を歩く。
何も変わらないはずの景色。
人の流れ。
声。
光。
その中で、
レティシアは足を止めない。
だが、
意識は別のところにある。
視線。
さっきから、
途切れない。
教師。
騎士。
見えない位置にいる観測。
すべてが、
わずかに重なる。
(……見られてる……?)
ふと浮かぶ、
単純な認識。
だが、
すぐに違和感が走る。
一拍。
否定する。
(違う)
何かが、
ずれている。
視線の向き。
止まる位置。
追い方。
すべてが、
微妙に一致しない。
人を見ている動きではない。
もっと、
正確なもの。
レティシアは、
ゆっくりと目を伏せる。
視界の奥に、
表示がある。
PERMISSION
ACTIVE
消えない。
揺らがない。
そして、
理解する。
(私じゃない)
見られているのは、
自分ではない。
もっと内側。
もっと、
深いところ。
(……これだ)
自分の中にあるもの。
外からは見えないはずのもの。
だが、
確かに“追われている”。
視線が集まる理由。
配置の意味。
観測の密度。
すべてが、
そこに繋がる。
レティシアの内側で、
言葉が形になる。
(権限……)
遺跡で得たもの。
力ではない。
機能でもない。
“状態”。
(それを見てる)
確信が落ちる。
彼らは、
自分を監視しているわけではない。
その中にあるもの。
接続。
権限。
それを、
追っている。
レティシアは、
再び顔を上げる。
世界は変わらない。
人も、
動きも、
そのまま。
だが、
見え方だけが変わる。
ここはもう、
ただの学園ではない。
自分はもう、
ただの生徒ではない。
静かに、
一つの理解が確定する。
監視されているのは――
“彼女”ではない。
“その中にあるもの”だった。