悪役令嬢は世界のバグを修正する
正門を抜けた先、
中庭にはいつもの賑わいが広がっていた。
昼の光はやわらかく、
石畳に落ちる影も穏やかだ。
風が通り抜け、
木々の葉が静かに揺れる。
生徒たちは思い思いに集まり、
談笑し、
行き交う。
遠征の余韻はまだ残っている。
「あの遺跡さ、結局なんだったんだろうな」
「さあな。なんか拍子抜けじゃなかった?」
笑いが起こる。
日常は崩れていない。
表面上は。
中庭の端、
正門の近くに、
騎士の姿がある。
一人ではない。
二人、三人――
それ以上。
配置されている。
立っているだけではない。
位置が、
明らかに“管理”されている。
視界を切らさない配置。
出入口を押さえる間隔。
だが、
それに気づく者はいない。
いや、
気づいても深く考えない。
「今日も騎士多くないか?」
何気ない声。
「最近ずっとだな」
返答も軽い。
違和感はある。
だが、
問題として扱われていない。
日常の中に、
静かに組み込まれている。
騎士たちは、
誰とも視線を合わせない。
だが、
全てを見ている。
監視は、
すでに始まっている。
それを、
誰も“監視”とは認識していないだけで。
空は変わらない。
光も、
風も、
何もかもが普段通り。
だからこそ――
その中にある異物は、
より目立たずに存在していた。