悪役令嬢は世界のバグを修正する
崩壊は、
無秩序ではなかった。
広がっているように見えて、
流れには“向き”がある。
魔力の逆流が、
一点へと引き寄せられていく。
偶然ではない。
選ばれている。
その中心に――
レティシアがいる。
彼女は動かない。
逃げようともしない。
ただ、
その流れを見ている。
歪みが、
彼女の周囲で強くなる。
空間が、
わずかに沈む。
距離が圧縮される。
遠くにあったはずの魔力が、
一瞬で近づく。
まるで、
彼女に“反応”しているように。
「……っ」
近くにいた生徒が後ずさる。
無意識に、
距離を取る。
理由は分からない。
だが、
本能が理解する。
“そこが危険だ”。
歪みは止まらない。
むしろ、
加速している。
流れが、
彼女を中心に組み替えられていく。
レティシアの視界に、
表示が走る。
PRIORITY
SHIFT
PERMISSION
INTERFERENCE
外からの干渉。
流れの優先度が、
強制的に書き換えられている。
(……違う)
これは、
自分ではない。
だが、
否定は届かない。
歪みが、
さらに収束する。
空間が、
彼女を“基準”に再配置される。
教師の視線が、
一斉に向く。
騎士も、
動きを止める。
観測員の装置が、
強く反応する。
すべての“結果”が、
同じ一点を示している。
レティシア。
誰も口には出さない。
だが、
認識は共有される。
原因は、
そこにある。
構造が、
そう見せている。
流れが、
そう導いている。
彼女は、
何もしていない。
それでも――
“原因に見える”。