悪役令嬢は世界のバグを修正する
歪みが、
一点に収束する。
空間の乱れが、
レティシアの周囲で固定される。
その瞬間――
「対象付近で異常増幅を確認」
声が落ちる。
落ち着いている。
だが、
あまりにも早い。
観測員は、
すでに装置を構えている。
起動の動作はない。
準備されていたかのように、
そのまま測定へ移行する。
光が走る。
空間の歪みを、
数値として固定する。
「出力上昇、局所集中」
「干渉波形、対象と一致率上昇」
報告が続く。
迷いはない。
確認の間もない。
まるで、
結果を知っているかのように。
教師が何か言おうとする。
だが、
その前に言葉が被さる。
「制御対象に影響あり」
断定。
選択肢を挟まない、
一方的な結論。
その声は、
周囲に静かに広がる。
誰も反論しない。
できない。
判断が、
早すぎる。
原因の特定には、
本来もっと時間がかかる。
分析も、
検証も、
何も終わっていない。
それでも、
結論だけが先に提示される。
観測員の装置が、
さらに強く光る。
レティシアの周囲だけ、
反応が強調される。
他の歪みは、
背景へと沈む。
焦点が、
意図的に絞られている。
「対象中心に干渉増幅」
繰り返される報告。
同じ内容。
同じ結論。
周囲の認識が、
それに引き寄せられる。
“そういうものだ”と、
納得させられる。
レティシアは、
動かない。
ただ、
その流れを見ている。
(……早い)
内側で、
わずかな違和感が確定する。
これは、
対応ではない。
“手順”だ。
決められていたかのように、
迷いなく進む介入。
原因の発生と、
ほぼ同時に。
それが何を意味するのか――
まだ、
誰も口にしない。